見出し画像

蔵書紹介:『人形劇 誰が一番馬鹿だ?』(1927年、ウイット・フォーゲル 辻恒彦 訳 金星堂)

社会文芸叢書第5編
『人形劇 誰が一番馬鹿だ?』
ウイット・フォーゲル 辻恒彦 訳 金星堂  1927.3

 1923年10月に試演会をおこない、3年後の大正15年(1926年)には築地小劇場で旗揚げ公演を行った「人形座」は、当時のモダニズムの流れを汲んだ新興芸術としての「人形劇」が新しい表現芸術であると認識させ、これをきっかけにして若き芸術家たちが競うように「人形劇」に取り組んだのだ。
 人形座旗揚げ公演の脚本『誰が一番馬鹿だ?』も出版され、ブームといえるほどに読まれた。

画像1

 この金星堂版の他には平凡社から、世界プロレタリア傑作選集として『だれが一番馬鹿だ』を1930年3月5日に出し、直後の3月25日にはすでに10版を重ねている。
 また、この単行本だけでなくバルビュスの『クラルテ』(佐々木孝丸訳)の上下と3冊の合冊版も同様に版を重ねているから、ベストセラーといえるほどの売れ行きがあった。人形劇脚本がこれほどまで売れたのは21世紀にいたるまでこれ以外にはない。いかに1930年前後の現代人形劇の出現が話題になる出来事だったのかという証でもあろうか。

 合冊版は650頁もあり、B6サイズ程度だからかろうじて片手で持って読めるかなというボリュームがある。
 『クラルテ』上下が3分の2を占めるも、タイトルは『外1篇』で済まされているのは、いかに読者の興味が『誰が一番馬鹿だ』にあったかということだろう。合冊版には外函が附属している。

画像2

右 世界プロレタリア傑作選集8 『誰が一番馬鹿だ?』 平凡社1930.3.25 10版
中 世界プロレタリア傑作選集  『誰が一番馬鹿だ 外1篇』3冊合冊 平凡社1930.3.5 初版
左 世界プロレタリア傑作選集  『誰が一番馬鹿だ 外1篇』3冊合冊 平凡社1930.3.25 10版


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?