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蔵書紹介:『八王子車人形調査報告書』

八王子車人形調査報告書
記録作成の措置を講ずべき無形の民俗文化財
八王子市教育委員会 2020

図3

 車人形とは幕末頃に西川古柳(永岡柳吉1825-97)によって三人遣いの人形を一人で遣えるように考案されたもので、人形遣いはロクロ車に腰を下ろし、人形を身体の前に持ち、弓手という構造で人形の左手を操作し、人形の脚は遣い手の足先に挟んで舞台の床を踏み演技する。この人形が床の上で演技することが、一般に宙で演技する他の人形芝居との最大の差異である。
 当初は説教節により演じられた、東京都下の多摩川流域で八王子を中心とした地域に展開する民俗人形劇。現存しているのは八王子市恩方、奥多摩の川野、埼玉の竹間沢の3か所だが、明治から昭和にかけては10を超える人形座が存在した。
 1996年、国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に八王子車人形が選択され、2016年から八王子市により調査研究が行われその調査報告として2020年に刊行された372頁からなる報告書。
 八王子で活動している西川古柳座(当代5代目 瀬沼亮)の、その歴史から現況、さらにひろく古柳座だけでなく車人形全般にわたる調査と論考を含む「車人形」の総合的な研究書といえる読み応えある内容で、巻末の関連文献一覧だけをとっても400点を超える文献が網羅されているなど、同種の報告書の水準を超えた出色の調査報告書といえるだろう。

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