足が描いている

「足が描いているんですよ」

太極拳の先生は おっしゃった。

手で円を描くような動きをしている時に。


私は 躍起になって 手で円を描こうとしていたんだけど、そうすると先生と同じ円にならないんだ。

先生は、そんな私達に教えてくださるんだ。

先生は、手で円を描いていないって。

足で円を描いているんですよって。

(詳細は先生にお尋ねください)


私の身体には、下半身が存在しないみたいだ。

疲れた時って、電車の座席に尻もちつくみたいな座り方しちゃうけど
そうすると、下半身が身体から消えちゃうの。

上半身しか存在しない身体になる。

腕とか肩の力だけで何とかしちゃおうとする身体に
なってしまう。

下半身の存在する身体でないと、先生と同じ円は
描けないのだろう。


雨の勢いが増してきたから、青空教室のお稽古は
流れてしまった。


でも、先生の言葉は 私の身体の中に残っている。

「手が描いてないです」

「足が描いているんですよ」

流麗な円を

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