忘れものの森

最近、昔好きだった絵本を自宅に揃え始めました。実家で落書きだらけの絵本を見つけて一冊持ってきたのが始まりです。
もともと物が捨てられない上に、懐かしい物が今更出てくると尚更捨てられないで、もう一度集めなおしてみようかと思ってしまう。
そうして捨てられなかった物を、まとめるつもりで書いてみたいと思います。

今回は、ねべりよん作「忘れものの森」。多分実家にもあるはずなのですが、見つからず(しかもこれまた落書きだらけなので)改めて購入しました。発行日ははっきり書いてありませんが、1975年の作品です。

音楽発表会の前日、笛をなくしたツトムは、笛を探して夕方の学校へ。見つからず困っているところに、奇妙な二人連れと出くわします。彼らは忘れものを管理する森の住人。
大切な笛をどうしても取り戻したくてツトムは二人と森へ向かいます。
ハンカチの花、ボールのスイカ畑、縄跳びのツル草…。うっそうとした淋しい森の中でツトムは笛を見つける事が出来るのでしょうか。

読んでいると、ずっと頭に浮かぶ風景は表紙のような暗い淋しい青緑の森です。怖いのではなく、淋しい。そんな色です。

子供の頃、この森の絵がとても怖くて悲しくて。

自分の笛を見つけた。でも森の長老に見つかってしまい、持ち帰るには条件がある。自分で見つけた自分の笛で、感動させる演奏をしてみなさい。

森の中はずっと白黒だった絵が、このページは明るい暖かい色で描かれていました。クライマックスのシーンですが、とてもとても幸せな気分になれるシーンです。
持ち主に会えたツトムの笛の気持ち、忘れられた笛たちの気持ち。笛の木の笛たちが見守っているように感じる絵です。

一番心に残るのはここ。

「忘れられたものたちは
忘れた人を忘れない。」

忘れものたちは、やがて花となり実となっていきますが、それまで持ち主との思い出を語るのだそうです。

「忘れものの森」ねべ りよん作・絵
文研出版1975 子どもランド

#絵本

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