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女1人北インドの記録 ②ニューデリー入国即詐欺集団に捕まる

この文章で伝えたいことはただ一つ、
〜ニューデリー駅降りてすぐのリキシャ乗り場からは乗るな〜
長いです。

インドへ入国

大阪の自宅を出てから16時間半、飛行機はほぼ定刻通りにデリー空港に到着した。

案内を見るとメトロが早そうなのでメトロに乗って市街地へ向かう。

メトロのトークン売り場(プラスチックでできたコインのようなもので乗車する)とその次の荷物検査はたくさんの人でごった返しているのだが、程なく1人の男性が「Ladies first!」と叫ぶと他の男性もぞろぞろと列を崩し、女性から先に進むように促してくれた。

よくインドは男尊女卑社会と言うけれど、こんな側面もあるのだな、とちょっと感心する。

メトロは香港など他の国の空港線でもよく見るタイプの車両で、拍子抜けするほど綺麗だった。

詐欺リキシャ①

ニューデリー駅に到着し、その晩泊まるホテルがある方角へと出た。
トランジット中の上海ではTwitterもInstagramも開けないため、退屈凌ぎにその晩のホテルを予約していた。ニューデリー駅から徒歩で行ける距離、一泊1200円。

さてホテルに歩いて向かおうと思ったが、20時近くだったため道はかなり暗い。
通りには屋台が並び人も行き交っているが、男性ばかりで女性が見当たらない。彼らはそこかしこで2.3人集まって、道端で焚き火をして暖を取っている。

皆キャンプ用のコンロなどは使用せず、アスファルトの上に直にゴミを集めて燃やしているようだった。
後にこれがインドの冬では一般的な情景だと分かるのだが、初めて見た時は暗闇のあちこちで燃え盛る炎がまるで火事のようで、かなり怖かった。

こりゃ歩いてホテルまで帰るのは危険だ。タクシーかリキシャに乗ろう。

駅を出て道を渡った所にリキシャがたくさん泊まっている。
20台はあるリキシャたちの前に立っている男にGoogle mapsでホテルの位置を見せ、いくら?と聞くと、奥から別の男が出てきて超〜つまらなそうに「500」と応える。

たっか!

500ルピーは確か700円くらいだった。
リキシャの相場はイマイチ分からなかったものの、徒歩で8分のところまで500はないやろ〜、日本のタクシーより高いやんか!と値切りを試みる。が、おっさんは首を横に振り続ける。

絶対おかしいとは思ったが、12月のデリーの夜は寒いし、焚き火燃え盛る野郎ばかりの夜道は怖いし、そのままリキシャに乗ってしまった。

リキシャを運転するのは若くてひょろっとした青年で、途中勝手に屋台に寄って噛みタバコを買ったり道端にゴミを捨てたりしながら焚き火と焚き火の間を進んでいく(本当にあちこちで焚き火がされていてリキシャに引火するのではと心配した)。

さて徒歩で8分の距離なのになかなかホテルに着かない。おかしいなと思いGoogle mapsで位置情報を確認してみると、ホテルに近付くどころかどんどん離れていっている!

その時は私もインドの人とやり合う方法が分からなかったので、日本でやるように「ちょっと運転手さん、道違ってますよ〜」とやんわり言ってみたりするのだが、青年は私をガン無視して走り続ける。

あれ、ヤバいぞこれは

リキシャは大型の駐車場で停止した。
おそらく駅の駐車場か。入り口にある大きなゲートに料金所がついている。

料金所の近くには男が2人こちらを向いて立っている。リキシャはゆっくりその近くに近付いて、止まった。

この男2人に暴行されて、身ぐるみ剥がされるんだろうな。まだ全然観光してないのに、ここで強姦されて死ぬんか〜。とか考えていると、男が話し出す。確かこんな感じだ。

「今デリーではニューデリーとオールドデリーで対立があっているのを知ってるか?
民族同士の争いがあっていて非常に危険な状態だ。その証拠がこの今朝のニュースだ。」

横のおっさんがスマホでYouTubeを私に観せる。ヒンドゥー語なので全く分からないが、土埃の中で人々が何やらワーワー言っているニュース映像だった。皆怒っているようだ。

インドには様々な宗教の人がいるし暴動もたまには起こるのかもしれないが、今日ニューデリーで起きたとは初耳だ。ほんまかいな?

おっさんは続ける。
「この暴動のせいでニューデリーとオールドデリーを行き来するには許可証を提出しなければいけなくなった。
(私のスマホのGoogle mapsを見ながら)君のホテルはオールドデリー。ここはニューデリー。わかる?
許可証がないとホテルには行けないよ!」(私のホテルはどう見てもニューデリーにあったのに、だ)

そしてさっきの駐車場の料金所を差しながら言うのだ。
「で、このゲートがニューデリーとオールドデリーの境界だ! これから君を許可証を発行する場所に連れて行くから、許可証を持ってまた来なさい。そうすればホテルに行けるよ!」

はあ〜?

いやどう見ても料金所やんか? 何が境界だ? と思った。

そもそも民族間の対立も嘘だろうし、両区間が通行できないんならもっと街全体が混乱しているはずだ。
人を騙したいならもっとマシなストーリーを考えてほしい。

こんな誰でもわかる嘘を大の大人が3人がかりで私に吹き込もうとしているのが滑稽で、変な夢を見ているようだった。

私はおっさんらに、あなたたちが嘘をついているのは知っているから、もうホテルは歩いていくんでとりあえず降ろしてくれ、と伝えたが、まあ降ろしてくれる訳ないですわな。

私を乗せたリキシャは「通行許可証発行所」を目指して暗闇を進んでいきます。

ドナドナ

しばらくして、小さな旅行会社の前でリキシャは止まった。

旅行会社。ここで私はインド渡航前に何度か聞いた話を思い出した。

デリーから入国し、リキシャに乗ると、ホテルではなく謎の旅行会社に連れて行かれる。
あれよあれよと言う間に頼んでもいないのにツアーが組まれ、インドに滞在中ずっとそのツアーに参加させられることになる。

この話、ネットでも見たし実際に被害に遭った人も知り合いにいた。
詐欺とは言ってもツアー料金は良心的な値段だし、ちゃんと名所も連れて行って貰いそれなりに楽しめたらしい。

とはいえ私は今回、自由な旅をしたい。あらかじめどこに行くか日程が決まっているのは嫌なので、謎ツアーにお金を払って参加させられては困るのだ。

リキシャニーチャンは旅行会社を指差し、「この中に入って許可証を発行してもらえ」と言う。
ここで旅行会社に入ってしまえばもう終わりだと思ったので「やだやだやだ絶対に入らない」と抵抗するがニーチャンも譲らない。

しばらく2人で言い合っていたが、次第に私はイライラしてきた。リキシャは客を指定された場所に連れて行くのが仕事なのに、何やってるんだこいつは。

私は「もういいわ!他のリキシャ探してホテル行くわ」と言ってリキシャを降りた。

詐欺リキシャ②

意外にもニーチャンは追いかけてこなかった。まだお金は払っていなかったが、別に良いか。とそのまま暗い道をずんずん歩いて行った。

Google mapsを見るとホテルからかなり遠い所まで連れてこられてしまっている。
どうすれば良いか決めかねてとりあえず歩き続け、曲がり角まで来たところで別のリキシャを見つけた。

さっきのリキシャはスクーターだったが今度はおじいちゃんが運転する人力式のもの。
何となくだが、これなら安心できそうだ。
おじいちゃんに行き先を告げ、今度こそは、とリキシャに乗り込んだ。

がしかし、10分後、またあの駐車場に着いた。

オイ!

男2人は相変わらずいて、私を見るなり「許可証は?ないのかよ?取ってこい!」と言う。
流石に理不尽すぎてちょっと涙出た。

で、また旅行会社に連れて行かれる…のは予想できていたので、その道すがらずっと「ホテルに連れて行ってくれよ〜」「嘘はやめてよお〜」
とおじいちゃんに向かって泣きついてみたが今回もガン無視。
仕方なし、走るリキシャの車内から飛び出した(危ない)。

勝手に降りて歩き出す私の背後でおじいちゃんが「大丈夫だ〜大丈夫だから〜」と叫んでいるのが聞こえたが、何が大丈夫なのか全然分からないのでそのまま逃げた。

もう流石に疲れたし、時計を見るとニューデリー駅を出てから2時間近く経っていた。
すぐにでも寝たいが、とてもホテルまで歩ける距離ではない。

さっきも書いたが、デリーの12月の夜は日本の冬と同じくらい寒かった。現地の気温を調べずに来てしまったので薄手のトレーナーしか着ておらず、震えが止まらない。
だだっ広い道の途中で立ち止まって呆然としていると、また別のリキシャが停まった。

詐欺リキシャ③

多分こいつもグルだろうな…と思いつつも、周りは大きな道が続くばかりで建物も何もなく、このまま歩いてもどうにもならなそうだったので乗り込んだ。

で、また駐車場に連れて行かれる。
男2人も「またお前かい」みたいな顔で特に会話もなくリキシャは旅行会社に向かう。

リキシャの運転手は「ちゃんと最後はホテルに連れて行くから」なんて言うが、頼むから今すぐ連れて行ってくれ。

半ば絶望しながらリキシャに揺られていると、ふと「情に訴えるか…」という考えが浮かんできた。

リキシャは「バイクの車輪に、車の骨組みと屋根と座席だけとりあえず付けました」みたいな吹きさらしの形状なので、走ってる間中冷たい風が体に直撃しめちゃくちゃ寒い。全身が冷え切って、歯もガチガチ鳴る。私は冷えた手を運転手の手に重ねて泣きついた。

「みんなホテルに連れて行ってくれない。寒くて寒くて死んじゃう。手がほら、こんなに冷たい」

運転手は私の手を触って「冷たい!」と驚き、若い女の手を握れたのがそれなりに嬉しかったのか、それから態度が明らかに優しくなった。

なぜか遠回りしながらだが(リキシャの運転手なのに地図が読めなかった)、「寒くないか?」なんて言いながら旅行会社には寄らず、ちゃんとホテルまで連れて行ってくれたのだ。

しかも「お代はいいよ」とまで言う。
明日になったら君のために1日デリー市内のツアーをしてあげよう。お金はそれと合わせて明日払ってくれたら良い。とのこと。

運転手と次の日の待ち合わせの時間と場所を約束して別れた。
(結局次の日、ツアーのことを忘れてすっぽかしてしまったのだが)
駅を出て3時間、ようやくホテルに到着した。

ちなみに1200円のホテルはお湯が出ないしベッド全体が湿っていた。

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