失踪したことがある⑪

某青年部の36時間耐久チャリティーソフトボール大会に行ってきた。僕たちのチームは第一試合、午前零時からのプレイボールと相成った。

圧巻は僕(ファースト)、Y(セカンド)、S(ショート)のトライアングルだ。三人合わせて総重量350キロ越えの超重量内野手トリオで試合に臨んだ。これを超える内野の体験は恐らく今後も訪れないと思う。良い記念になった。

出店もあって和気あいあいとした雰囲気の試合ではあるが、日頃の運動不足に加え、普段ならお布団の中にいる時間帯でのスポーツだから、みんな怪我だけはしないように気をつけた甲斐があって、無事全員怪我なく一試合終えた。スコアは22対21で僅差の勝利であった。

本部の人たちはこれから明日の正午まで運営にかかるらしい。過酷なチャリティーイベントである。大会が最後まで無事完遂出来るよう祈る。

帰ってきたのが午前三時過ぎ、明日は朝から息子の保育所の整備作業がある。早く寝たいがひさびさの運動で興奮しているのか目がさえて仕方ない。眠れない夜にシコシコと文章を綴る。こんな夜も乙なものである。

>>>>>

応接室に移ってからも眼鏡さんとのやり取りは続いていた。朝7時半ぐらいになって、ぼちぼち日勤のお巡りさんたちが事務室に入って来ている。皆さん申し送りは受けているのだろう。見知らぬ巨漢が応接室で座っていても見てみぬフリをしてくれていた。

「ご家族の方が到着するまであと一時間かそこらだそうです。」眼鏡さんが教えてくれた。狭い取調室から始まって、だんだん部屋が大きくなって、気分も上がってきたところにそれを聞いて、またシュンとなる。

「大丈夫ですよ!しっかり謝って許してもらえたら、市内の観光していってくださいね。」眼鏡さんの優しさが身にしみる。ああ、家族が来たら最初になんて言おう…。

気分を落ち着けるためにまた一服しに行った。一応眼鏡さんが着いてきてくれるがほぼノーマークになっている。僕がここから逃げる気がないことが伝わっていて嬉しいような。そんな風に見えるのだろうか。見た目の自分の人柄は分からないが、いい人そうに見えるのか。…本当にいい人だったら失踪はしないな。そう思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?