失踪したことがある⑬

1月も末だ。1月は去ぬ、とお年寄りから言われる通り、あっと言う間の1月だった。今年の冬が暖冬なことが原因なのか、お客さんの依頼もふと思いついた様な急なものが多い。まだ本調子には程遠いながら、最近は毎日仕事をコツコツこなすことが出来ている。

今夜は親しい人の喜び事の打ち合わせという名目で、某団体の仲間たちと集まって飲んだ。人を喜ばせるための準備は楽しい。僕が通院している精神病院の先生に、去年の秋頃から節酒を勧められているため、何も無い日は炭酸水で我慢している。この手の集まりがある時だけは大手を振って飲めるので、皆さんどしどし僕を飲み会に誘ってください。お便り待ってます。

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「何でこんなことしたん!?」

嫁さんの尋問が始まる。

「仕事が…イヤになった。」

そんなやり取りをしている間、嫁さんがいないところで両親に担当者さんがこっそり話をしている。きっと自殺未遂のことだったんだろう。両親の顔色が見る見る白くなった。両親がこっちを宇宙人を見るような目で見てくる。重ね重ね心配をかけてしまって誠にすいませんでした。

嫁さんが伝えてくれた、地元の人たちが出迎えに来てくれていることを聞いて膝が震える。どんな顔したらいいか分からない。とても顔向け出来ない。

そうこうしている内に、警察から両親への申し送りが済み、後は帰宅することとなった。僕が乗ってきた軽バンは母が運転して持って帰ってくれるらしい。甲奴町からここまでの遠距離を軽バンで帰るのはかなりしんどいだろうに。また一つ胸が重くなる。一方僕はというと、父が一緒の帰り道だと気を使うだろうからと、迎えの人たちの車で帰ることになった。

「出迎えの人たちが到着されました。」

眼鏡さんが教えてくれた。恐る恐る警察署から出ると、隣家のOさん、地元の先輩のKさん、Tちゃん、同級生のOがいた。みんなニコニコしていた。

「…すいません…でした…」

それだけ言うと、僕は膝をついた。少し泣いた。

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