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「hers(on me)」

口を閉ざさないと俺は話せない。目を閉ざさないと俺は見えない。心を殺さないと俺は感じない。

口を開けたとき俺は黙り込み、目を開けたとき俺は視界を無くし、心を生かしたとき俺は無になる。

俺以外の空間をなにもかも消してはじめて、Tシャツに描かれた何十枚もの女たちに会える。

気の合わない女だらけだ。気に入らない。気が滅入る。

俺は最強で最狂なので最低の体裁も気にせず、Tシャツを次から次へと投げ捨てる。

1枚だけ残ったのは、いま俺が着ているTシャツの女だ。口を閉ざし目を閉ざし、カッサカサの心の屍体をかっさばき、女に告げる。

すると女はこう冷たく言い放つ。



女は、俺のなかから彼方へ消える。辟易した俺は、口を開けて目を開けてこの世界を諦めて視界を明らめようとしたが、俺がいま触れることができるのは、心の屍体だけだ。カサカサの屍体をゴソゴソと。


俺は触れている。
俺は狂れている。




サウナはたのしい。