何者でもなかった主婦が本を出すことになった話
2023年7月10日。
初めて書いた本の出版日。
この日は、私にとって忘れられない日になるに違いない。("ナットウの日"でみんなも覚えてね)
本のタイトルは、『暮らしの図鑑 タイの毎日: 笑顔でのんびり過ごすヒント47×基礎知識×タイカルチャー』
「タイ人から学びたい、毎日を笑顔で暮らすヒント」について、あらゆる角度から紹介。
タイの暮らしで感じたタイの良いところを、47項目にわたり言語化しています。
ことの始まりは、2022年9月。
出版社である翔泳社の担当の方から、突如メールをいただいたのです。
「企画中の書籍の著者として、執筆しませんか?」と。
その企画中の本というのが、今回の「暮らしの図鑑シリーズ」のタイ編でした。
青天霹靂とはまさにこのこと。
「え、私が?本?いや無理やろ。」というのが最初に出てきた言葉。
だって、私は確かにタイに住んではいたけれど、別にタイ語ペラペラなわけでもないし、タイの歴史について学んできた訳ではないし、家族にタイ人がいたわけでもない、元不動産営業マンが夫の海外転勤にくっついてタイに移り住み、普通にタイに住んでいた、何者でもないただの主婦なのだから。
ちなみに「暮らしの図鑑」シリーズで海外の暮らしを取り上げた本の第一弾が台湾編だったんですが、その著者があの青木由佳さん。
青木由佳さんって言ったら、台湾に疎い私でも知ってる台湾のカリスマじゃないですか。たくさん著書もあって。そんな人と肩を並べて翔泳社の人気シリーズの著者なんて無理ゲーすぎる。
でもね。私の頭の中にいる下世話ぷくこが耳元で囁くんですよ。
「本なんて出したらめっちゃカッコよくね?」って。
曲がりなりにも文章を書いて生計を立てている人間にとって「出版」という響きに憧れがないと言ったら嘘になる。
そして思い出したのです。私の子供の頃の夢は、漫画家だったことを。
(姫ちゃんのリボン1巻分を自由帳に丸々写してクラスメイトに見せて回ったりしてた。みんな本物読むやろうに謎行動過ぎる。学校の作文で「売れっ子漫画家になって印税たくさんもらって、大好きなマグロのお寿司をいっぱい食べたいです」なんて書いて発表した黒歴史まで一緒に思い出して恥ずかしさでのたうち回る。)
漫画家にはなれなかったけれど、好きだった不動産の仕事も辞めてタイに来たけれど、こういう形で夢を叶えられたら私の人生も報われる気がする。
ここで力不足だって断ったら、それはそれで絶対に後悔するし、カッコ悪すぎる。
あと、「暮らしの本」というコンセプトがいいなと思って。
前にKindle出版でタイの観光本を出さないか?みたいな話もあったんですけど、タイのお店はコロコロ変わるから労力の割に短命な本になりそうだなと。それならWEBの方に注力したいと思って断ったことがあるんです。
「暮らし」にフィーチャーした本なら、長く読んでもらえそう。
という風に、いろいろな葛藤を経て、今回のお話を受けさせていただきました。
実際、お話をいただいた段階では企画段階だったので、もう少し具体的な内容を詰めていって、構成がほぼ固まったのが10月末。
そこから年末までは、本のページ数から逆算して、どんな内容を何ページ書くか、という本の骨格を考える作業に明け暮れ、その内容から必要な写真を洗い出し、手持ちで用意がないものは年明けの渡タイで撮影。
そして、1月から4月までずーっっと執筆作業。5,6月は校正に次ぐ校正作業。
合間に本をたくさん読み、タイ文化と歴史を教えてる人の授業を何コマも受け、ドラマも映画も死ぬほど見ました。
一日中本の執筆だけできたらいいけど、他の仕事もあるし家事もあるから、最後の方はもうカオス。昼間に別の仕事をして、子どもの習い事の間に文章チェックして、ご飯作って、寝かしつけ後に指摘のあった文章を考え直して…
私のなかで、締め切り間際の作家先生ってホテルの一室にこもって、作業するイメージだったのですが(コナンだったらそこで殺されるやつ)、子持ち主婦がそんなことできるわけもなく。
自分で自分の文章を読みすぎて、もはや面白いのかどうかも分からなくなっていたし、ずーっと不安に駆られていました。
読んでくださった皆さんの感想が優しいものばかりで(単純に厳しい言葉が言いづらいだけなのかもしれないが)、今ようやくホッとしているところです。
そして見本誌をいただいてから自分でも改めて客観的に読んでみたら、なかなかどうして面白い。うん。面白いんですよ。
偉い学者さんが書いたのではなく、旅人が書いたでもなく、普通の主婦がフラットな目線でタイの良いなと思うところを書いているので、住んでいた(る)人なら共感してくれる部分も多いはず。そして、旅行者の方にも、ガイドブックには載っていないタイのもう少し内面の魅力を知ってもらえるはず。
でも、あくまで数年住んだだけの私の目から見たタイであって「これがタイだ!」と断定するつもりはありません。あくまで「こういうところもあるよね」というもの。
国なんて数年住んだだけで断定的に語れるような、そんな浅いものじゃないよね。
とはいえ、その数年住んだだけでも魅了された、タイ人のハッピーな考え方を、日本での生活にひと匙でも取り入れてみるだけでも、毎日が楽しくなるんじゃないかなと思っています。
私にとってラッキーだったのは、担当編集さんがとてもとても良い方だったこと。同い年の女性で、いつも即レスをくれて、私の書くものを褒めてくれて、やり取りに何のストレスもありませんでした。これって凄いことだなと。
そして、書いた文章を彩ってくれたデザインもイラストも、とっても素敵で。私はGoogleドキュメントに書きまくって提出しただけなんですが、次にデータが送られてきたときには、きちんと本の形になってるなんて、どんな魔法なんですか。しかもめっちゃ可愛いし。
そんな方々に担当していただけたのは、ラッキーとしか言いようがない。(実際には編集さんの頭の中で完成形があって、それに合う人を指名してくださったんだと思うのですが)
本ってすごいですね。信じられないほどたくさんの人が関わって、長い月日をかけて1冊の本を作りあげていく。
そして、出すって発表してから色々な人が祝福してくれる。
こんな素敵なチャンスをいただいて、感謝でいっぱいです。
少しでも多くの人に読んでもらえることを願っております。
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