取引失敗

孫ちゃん(仮名)との昨夜を書きたい。

何だかんだと土曜日以外のお預かり予定が延期になり、今週は土曜日だった昨日のみお預かり。

孫ちゃんと予想がつきつつ、何らかの質の悪い業者のようにインターホンを鳴らしまくる嵐の中を玄関に向かう。こういう時は孫ちゃんは親さんに抱かれて靴を履いていない。親さんは慣れているとはいえ孫ちゃんを抱えたままドアの向こうで待っているのは寒かろうしんどかろう。。と思いながらも私は笑っている。遠慮なく好きなだけインターホンを鳴らせるのは我が家ぐらいのはずだから。

玄関のドアを開け、迎え入れて玄関マットに立たせると親さんが持参した晩ごはんの袋を片手に早々に手を振り親さんにバイバイする孫ちゃん。早いよ。笑
親さんから抱っこで孫ちゃんを受け取った時もそうだが、到着早々に親さんにバイバイする時は機嫌が良い。今日のお預かりは大丈夫と思って良い。
親さんも早々に行ってしまった。時間が無い時は秒で行ってしまう。お互い慣れたもので別れを惜しむことはもう無い。

孫ちゃんも2歳数ヶ月。我が家は親さんが生まれ育った所だが親さんに負けず劣らず「勝手知ったる」になっている。
それでも室内にシーツを干してしまって「お絵描きの紙」が見えなくなっており、この年齢特有の不完全かつ可愛らしい発音で「描きたぁい」を「ぁっきたぁい」など催促して私に紙を出させるなどする。
今回はいつものクレヨンでなく私のボールペンで元気にぐるぐると表も裏も書きなぐる。私の画伯は専用にクレヨンを用意しても私のペンをご所望されることも珍しくない。
ちなみに「お絵描きの紙」は広告の裏。親さんが「紙の価値がわからないのに専用の紙を買わなくていい。もったいない」と、まだ許可をくれない。クレヨンは早々に私が1歳半ぐらいかその頃に買ってしまった。その時に落書き帳が売り切れていて、親さんとの買い物の時に許可をもらえなかったのだ。ちなみにこのクレヨンも私が「1歳でも使える!」と早合点して購入したが対象年齢は3歳以上とあるもので、早々と折られたり齧られたりで既にボロボロだ。

お布団のカバーを駆けていなくて、用意しようとすると孫ちゃんもついてくる。勝手知ったる孫ちゃんは我が家でのルーティンを覚えて、ゴロリと仰向けになり「替えるが良い」とオムツ替えする気満々。結果、出掛ける前に交換したばかりのようで全く濡れていないので元に戻す。次は着替えで、リメイクしたばかりの親さんが小学生の頃に来ていたパジャマを選んで張り切って着替える。当時流行った色柄と思うが、孫ちゃんにもウケが良いようだ。
ルーティンを終えて布団の支度を始めると、孫ちゃんは「これ知ってる!わかる!」とタオルケットを抱えて敷きにかかる。しかし敷き布団を敷いていないのでおばーさま(私)に待ったをかけられる。
敷き布団のカバーをつけることが面白いのか、飽きもせず見ていて、更にシーツも掛けるが、フラットタイプシーツを敷き、四隅を折り込むのに布団の中心におばーさまが座ると自分の枕をきちんと定位置に据えて「孫ちゃんはここ!」と寝転んで見せる。面白く可愛らしいので「寝る?」と聞くと「嫌よおばーさま意地悪なんだから」と言いたげに慌てて起きる。おばーさまの枕も設置を頼むと、小さい体には大きく見える枕を抱えて何か大きな仕事に取り組むように枕を運ぶからまた面白い。枕の設置はいつも孫ちゃんに頼む大事な仕事。掛け布団にもカバーをつけてタオルケットと設置すると、孫ちゃんに誘われて台所に行くことになる。

台所で親さんが持参した晩ごはんを温め、待っているのも2~3分というところだ。私を待たず早々に居間に行った孫ちゃんを見て吹き出しそうになった。
私の薬ポーチを両手で持って満面の笑顔でこちらを見ている。
Twitterでよく登場するあのお薬が入っている。
しかし今はご飯の時間なので、目を反らすものは無いかとゴソゴソ探して、新しいカルピスのボトルと孫ちゃんのカップを渡して成功する。
運良くまとめ買い出来たおかげで、「おばーさまの家ではカルピス」が枕ちゃんの楽しみらしい。
ご飯のおともにカルピスは孫ちゃんの晩酌のようなものか。家でどうなのか知らないが、私が預かりやすいように親さんの許可が貰える範囲で割と甘い設定にしている。
途中で薬が良いと言い出されるが、「ご飯が先ね」という取引は成功する。
孫ちゃんのご飯の後、私がご飯を食べるスタイルをこの日は取ったけれど、孫ちゃんは絶対に膝から降りてくれず、ご飯はパスタだったので大変食べづらいことに。膝から降りて一緒にご飯を食べるスタイルは我が家ではいつだろう。尚、食べさせる時は二人羽織スタイルで口の位置を確認しながらで忙しい。

はいお待たせしましたお薬の時間です!
我が家で一番盛り上がる時間で、孫ちゃんは私の薬を正確に選び取った後、自分の「お薬」も探し出す。
孫ちゃんの「お薬」は錠剤のシートに似たパッケージのチョコ菓子2種類と何らかのお菓子で3種類。私の薬も錠剤2種類と漢方薬の袋。一応平等だ。仲良くそれぞれの薬を口にする。この時は膝から降りてポットはここだと私の薬がスムーズに飲めるように孫ちゃんなりに手伝ってくれる。私がポットのお湯で薬を飲むからだ。

タイトルの取引が失敗するのはここからで、この日にチョコ菓子が切れたのを目で知った孫ちゃんが偉くがっかりなさるので、私としては特別に目の前で補充して見せることにした。
元気が有り余っているようなので、孫ちゃんにお薬の袋からチョコ菓子を取り出すように少しでも歩いてもらった。しかし…

孫ちゃんは全てのプチプチの中にチョコ菓子が入っているシートを渡さない。自分のものだと言いたいらしく、拮抗する。
仕方ないので、「今日だけよ?お薬はおかわりするものではないから親さんには内緒ね?」と言いながら秘密の共有として私も一緒に1粒ずつご相伴に預かることにした。一応交渉成立した。

シートを手渡され、約束は約束なので1粒ずつ取り出す。チョコ味のは孫ちゃんの手から渡され私も食べた。複雑そうに孫ちゃんは私を見ていたが、そういう約束だ。次に苺味のシートから取り出すと、孫ちゃんは素早く自分の分を口に入れる。次に私の分を取り出すと、手渡されて私が食べるはずなのに、それも止める間もない速さで孫ちゃんの口に入ってしまった。ものすごい速さでカリカリ音を立てて消えてしまった。
話が違うではないか。それはおばーさまの分だったはず、と「取引が失敗だった」ことを順序だてて話すところまでするが、おそらく“自分の薬”に対する孫ちゃんなりに思うところがあるのだろう、一歩も引かない孫ちゃん。

補充係はまだ務まらないね。

成長具合はこうして定期的に確認出来る日を神様はくれる。大人しくこちらが準備万端にしていてはわからないことが沢山ある。

この後、流れ的に寝るのだけど、寝る訳がなく読み始めたら動き回るくせに絵本を2話ほど読まされ、電気を消しても泣いて抗議して2回ほど起きる。「ぅおぁよ🎵(おはよう🎵)」と機嫌良く電気が点いたのを喜ばれ、孫ちゃんはもう2歳で赤ちゃんではないが今Twitterのタイムラインで流れてくる“赤ちゃんには反町隆史のポイズン”を思い出しスマホで流したらようやく寝るという有り様…と見せかけておいて「ぉえやいきたい」と何度も繰り返し、“ぉえや”がどうやら“お部屋=我が家の居間”だと私が気づくまで粘り強く訴え、泣いて抗議した涙の水分を取り返すように再びカルピスを飲んでようやく寝たのは日付が変わってからだ。

親さんが保育園行けてないとか昼寝していないと言ってくれていたら、とも思う反面、見ればわかるとも思うが、孫ちゃんは嵐のようだった。

その後、私はインターホンが鳴った気がして2回ほどか玄関に向かい、何となく玄関を開けず布団に戻っている。3回目には部屋のドアを開け、音を立てず玄関に行けるようにして寝た。玄関までの足音や気配は玄関のドアの外からもわかることを知っている。しかし玄関のドアの向こうの気配は親さんとは違った。開けてはいけないと思った。

4回目には本当に親さんで、一連の様子を着替えさせながら話した。丁度孫ちゃんが寝返りを打って私にくっついてきた時に私が玄関に向かったので、泣いて怒っていたので親さんに早く気づいて帰りの支度は楽だった。
親さんは薬の話には「我が家もおかーさまの話を聞いて買った。どこに置いても見つけて離さない」と答え、インターホンの話では「何か怖いね、開けなくて良かった」と答えた。
他に今日の孫ちゃんの羽織り物やお土産の話を少し。新しい服で私は可愛いと思うが親さんは可愛いけど安っぽいとこぼし、お土産は孫ちゃんが気に入ったバスマットが完成したぐらいの内容。私は使わないボディソープとともに。片付けていたら出てきたのだ。

いつもこんなとりとめのない、ふつうの週末を過ごしてはTwitterではお花畑全開でツリーにして話している。
孫ちゃんは小さいが、預かり始めた生後1ヶ月過ぎから比べたらだいぶ大きくなり、神様と親さんの預かり物から小さな人間になってきている。このお小さい方に毎週会いたい。「お薬」はもうおかわり駄目だけどね。

よろしければサポートお願いいたします。頂いたサポートは記事で役立てたいと思います。