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さるくんと、いぬくん

第一章:使命のはじまり

テレビから流れるニュースがサラの耳に飛び込んできた。

「ある地域で猿が繁殖し田畑を荒らしています。対策に駆り出されたのは地域の犬たちです。」

サラの飼い犬、ロビンもその一員だった。彼は猿の繁殖を止めるために「猿捜索犬隊」に任命され、飼い主のサラから引き離されていた。

「おーい、ロビン!今日は猿を見つけたかい?」
「なかなか見つからないね。。。気配を感じてどこかに隠れているんだろう。」

ロビンは捜索に全力を注いでいたが、猿たちは彼の気配を察して身を隠し、なかなか見つけることができなかった。彼はサラや近所の人たちのために、使命感を持って捜索活動に挑んでいた。

ある日、町長がロビンに向かって言った。
「ロビン、他の町の捜索犬隊は多くの猿を確保しているよ。君はまだ確保できていないんだね。このままでは、ご主人の元には帰れないよ。気を引き締めたまえ。」

ロビンはさらに決意を固め、食事も忘れて毎日毎日、猿捜索に没頭した。

第二章:孤独と希望

ある日、捜索活動から宿舎へ帰る途中、ロビンはふと空を見上げた。

「サラ、元気かな。。。」

夕焼けに染まる空を見て、サラと毎日散歩した日々を思い出した。彼は寂しさに耐えきれず、心が折れそうになっていた。

「きついな。。。僕にはこの仕事向いてないんじゃないかな。。。サラに会いたい。。。ひと目だけでもいい、元気をもらいに行きたいな。。。」

ロビンはこの時、身も心もボロボロだった。しかし、彼は歩き出した。夕焼けに向かって走り出した。

「もういい!任務より家族が大事だ!サラが大事だ!」

真っ赤になって潤んだ瞳は夕焼けと重なり輝いていた。ロビンはどんどんスピードを上げて走った。

(もうすぐ着くぞ。。。あと一息だ。。。)

その時、畑の向こう側からか細い声が聞こえた。

「んう。。。お母さん。。。どこ?お腹すいたよ。。。」

ロビンが恐る恐る近づいてみると、小さな小猿がうずくまっていた。顔色も悪く、かなり飢えているようだった。

「さるくん?大丈夫かい?犬たちに追いかけられてお母さんとはぐれたんだね。お腹が空いているのかい?」

さるくんは、今まで追いかけられていた犬たちと同じ姿のロビンに怯えていた。

第三章:友情の芽生え

ロビンは迷った。このまま小猿を確保して報告するか、見捨てるか、それとも助けてあげるか。迷って迷って一時間が経過した。さるくんは、追いかけもしないロビンに安心したのか、徐々に近づいてきた。

3時間が経った時には、さるくんとロビンは寄り添っていた。空は真っ暗になり、綺麗な星が瞬いていた。

「さるくん、お腹すいただろう?」
「うん。でも何も食べるものがないんだ。どれが食べれるのかわかんないんだ。」

「そうなんだね。いつもお母さんに美味しい物をもらってたんだね。ちょっと待ってて。」

ロビンは少し先に見えたさつまいも畑に向かい、さつまいもを掘り出して戻ってきた。

「ほら、さるくん、これなら食べれるよ。」

「でも、ロビンは僕たちを確保する猿捜索犬隊でしょ?お母さんから聞いてるよ。その首輪が目印でしょ?」

「もういいんだ。そんなことより君が無事でいる方が大事だ。」

さるくんは美味しそうにさつまいもを頬張り、涙を流していた。数日間何も食べていなかったのだ。

第四章:再会と約束

太陽が昇り、空が明るくなった頃、さるくんの耳にお母さんの声が聞こえた。

「キキー!キキー!さるくん、どこ?いる?」

さるくんは飛び起きて叫んだ。

「お母さん!僕ここだよ!」

お母さん猿は、さるくんの隣にいるロビンに威嚇していた。だが、さるくんはすぐにお母さんの元に駆け寄り、再会を喜び合った。

ロビンの目から涙がこぼれた。彼もサラに会いたい気持ちが溢れていた。

「ロビン、ありがとう。君も早くサラに会えるといいね。大丈夫、会えるよ。」

さるくんとお母さん猿はロビンの背中を包み込み、感謝の気持ちを伝えた。ロビンはその温かさにさらに涙を流し、笑顔になった。

第五章:新たな始まり

さるくんとお母さん猿は山に帰っていき、ロビンは再びサラの元へ帰る決意を固めた。彼は新たな希望を胸に抱きながら、サラとの再会を夢見て歩き続けた。

数日後、ニュースで流れた情報がロビンに希望をもたらした。

「猿捜索活動を取りまとめていた団体は不正に犬を連れ出し、飼い主の同意を得ないまま活動していたことが発覚。愛護団体と警察が捜査に入る模様です。」

そして、ロビンはついにサラと再会した。

「ロビン!こっちよ〜。早くおいで〜」

「ワン♪」

ロビンはサラの元に戻り、再び幸せな日々を取り戻した。彼とサラは、共に新たな未来を歩み始めた。彼らの物語は、友情と愛情、そして困難を乗り越える力の大切さを教えてくれるものとなった。

おわり


(以前作ったものを少し修正し応募して見ました。)


#創作大賞2024

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