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「文化を纏う」をコンセプトに使われなくなった生地をアップサイクルするrenacnatta(レナクナッタ)大河内愛加さんインタビュー

Public Mind

「使われなくなったけどハイブランドのデッドストック生地」
「このままではつくられなくなってしまう伝統産業の生地や技術」
「着られなくなった着物の生地」
そんな「れなくなった」生地を巻きスカートやネクタイなどに仕立てるのがrenacnatta(レナクナッタ)の大河内愛加さんです。共通するのは「文化を纏う」というコンセプト。

1 大河内さんポートレート

・日本とイタリアの文化を纏うとは?
・使わ“れなくなった”モノにたどり着いたきっかけは?
・新たに立ち上げたブランドの秘密とは?
伊勢丹新宿店での期間限定ポップアップも好評だった注目ブランドのインタビューをご覧ください。

1.イタリアで気づいた日本のモノづくりの素晴らしさ

――イタリアに住まわれていたそうですね。
15歳から家族でイタリアに渡り、ミラノに住んでいました。高校では美術を専攻し、大学ではアートディレクションを学びました。

――ミラノで日本のモノづくりに触れる機会があったそうですね。
ちょうど経済産業省がクールジャパン戦略を推し進めていた時期で、ミラノにクールジャパンのショールームができました。日本に携わる仕事をしたいと思っていたので思い切って扉を叩いてみたんです。すると「イタリア語を話せる日本人」を探していたようで、すぐにお手伝いすることになりました。

――どんなお仕事をされたんですか。
日本の様々な産地のプロダクトについて、職人のデモンストレーションや交流会を開催したり、展示や集客に関わる全体のオーガナイズをしていました。ショールームに来るヨーロッパの方々はもちろん、日本中のモノづくりに関わる方々とお会いする機会になりました。

――どんなプロダクトを取り扱っていたのですか。
例えば蓋の重さだけで吸い付くように自然に締まる茶筒。精度の高さや素材の良さが評価されていました。着物のように「わかりやすい日本のモノ」ではなく「ヨーロッパの生活にマッチするモノ」が売れていることに気づきました。

2.使わ”れなくなった”シルクや着物地を活かす

――その後、ご自身でブランドを立ち上げることになりますね。
イタリアに渡ってちょうど10年が経ち、日本とイタリアを組み合わせた何かをつくりたいと思いました。最初につくったのが巻きスカートです。

――巻きスカートですか?
私は小柄なので、なかなか満足いくスカートを選べませんでした。巻きスカートなら体型を選ばずに良いデザインのものを選べて、ピタッと自分に合わせて着ることができます。

――使わ“れなくなくなった”生地を使っていますね。
大学でファッションを学ぶ友人から「ヨーロッパのラグジュアリーブランドのデッドストックシルクがある」と聞きました。ミラノ近郊のシルクの産地に行くと本当にあるんです。使われなかったといっても有名ブランドが選んだ生地。たまたまスポットライトを浴びなかっただけでとても価値があることは一目でわかります。ぜひ使いたいと思いました。

――日本の着物も使われていますね。
はい。巻きスカートのように巻いたりたくしあげるので、着物の生地は使えると思いました。着物でも使われていない絹の反物があると知り、当時イタリアにいたので電話やネットで問い合わせてサンプルを送ってもらいました。

――そうしてできあがったのが日本とイタリアの文化を纏うスカートですね。
そうです。使わ“れなくなった”イタリアのデッドストックシルクと日本の着物が融合し、新たなものに生まれ変わる。このブランド背景が「renacnatta レナクナッタ」という名前につながりました。

3 巻きスカート

2 巻きスカート

3.つくら“れなくなった”伝統技術を活かす

――お客様の反響はどうでしたか。
はい。20代や30代の若い世代はもちろん、60代や70代など幅広い年齢層の方々から反響をいただきました。「使われなくなった素材を使って文化を纏う」コンセプトに共感する声が多かったです。しかし課題もありました。

――どのような課題ですか。
使われなくなったデッドストックの材料には限りがあります。生産点数が少ないため、販売すると間もなく売り切れてしまうのです。うれしいことなのですが「残念、また買えなかった」というお客様の声も聞こえてくるようになりました。

――それが次のレナクナッタにつながるのですね。
はい。ご縁があって京都に拠点を置くことになったのですが、モノづくりをしている多くの方々と出会いました。そこで知ったのが「素晴らしい伝統があるけど生産が先細りになりそうな生地や技術」です。このままだとつくられなくなってしまうかもしれない。そんな「つくら“れなくなった”」素材や技術を生かすことで、デッドストックではできない量産を目指すことにしました。

――どんな商品を展開しているのですか。
「西陣織」を使った衣料品を展開しています。

9 西陣織ドレス

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――着物ではない衣料品を作られているのですね。
はい。伝統工芸品である西陣織ですが、ポリエステルで織っているので水や摩擦に強く、絹の西陣織よりも使いやすくなっています。伝統工芸は素晴らしい技術ですが、そのまま生活に取り入れるにはハードルが高い部分があります。ミラノのショールームで「ヨーロッパの生活にマッチするモノ」が売れていたように、「日常使いできるモノ」を考えて商品に落とし込みました。

――商品をつくるときに気を付けていることはありますか。
自分が着たい、付けたいと思える特別の一着になるものを考えてつくっています。レディースアイテムなら「私自身が身に着けてテンションが上がるモノかどうか」を考えますし、着ることができないメンズアイテムも大切な人や友人が着ている・持っている姿を想像しながら商品化するようにしています。

4.ミラノと京都の共通点

――ミラノでの生活を通じて感じたことを教えてください。
住んでいたアパートは築180年でしたし、骨董市で買ってきた古い家具を置いていました。身の回りに古いものがたくさんあって、生活に根付いていたのが印象的です。
私は新しいものも好きですが、すっと使われていたものの方が落ち着きます。そんな古いものを大事にするライフスタイルはミラノで生活したからこそ気づいたことです。

――今いらっしゃる京都はどうですか。
京都も古いものを大事にするライフスタイルが残っていると思いますし、私もそこに携わりたいなと思って仕事をしています。西陣織の織元をはじめ、ご一緒している方々に同世代が多く、互いに刺激を受けながらモノづくりをしています。とても面白いまちです。

――ミラノと京都で共通点はありますか?
ミラノも京都も時間の流れ方が似ている気がします。ゆっくりしていて私に合っています。

――大河内さんの取り組みをサステナブルと評価する人も多いと思います。
今はサステナブルやエシカルが強く叫ばれていて、一部では「こういう取り組みをしなきゃ」と無理をしている印象も受けます。しかしあまり無理をすると綻びがでるかもしれません。
renacnatta(レナクナッタ)を立ち上げた2016年頃はエシカルとかサステナブルは今ほど流行っていませんでした。私自身が「使われないのはもったいない。いい生地だから使いたい」と思って進めてきました。私にとって自然の流れでやってきたことが、周りからはサステナブルに見えているのだと思います。

5.新ブランド 着ら“れなくなった”着物をアップサイクル

――今回、新しくブランドを立ち上げたとお聞きしました。
一点ものネクタイ専門のアップサイクルブランドcravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)です。着られなくなった着物をほどいて、全工程手縫いで仕上げたネクタイを提供します。

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cravatta by renacnatta

https://www.cravatta-by-renacnatta.com/

――ブランドを別にしたのですね。
これまでは着物になる前の反物、つまり「使わ“れなくなった”」生地を使っていましたが、今回は「着ら“れなくなった”」着物の生地をほどいて使います。これまでのrenacnatta (レナクナッタ)とは世界観が異なることもあって新しいブランドにしました。
着物1着から取れるネクタイは一本。全て一点ものでご提供しています。

――どんな特徴がありますか。
ネクタイの原点に近いクラシカルな技術「セッテピエゲ」を採用しています。セッテピエゲとはイタリア語で数字の7(Sette)と折り目(Pieghe)で、7つ折りのネクタイを意味します。通常のネクタイのような芯地も裏地もなく、一般的なネクタイの約2倍の布地を使って手縫いでつくっています。

――芯地も裏地もないのですね?
いまのネクタイは型崩れしないように芯地を入れて裏地をつけます。その昔、よい芯地が手に入らなかったころは型崩れしないように縫製技術で補う必要がありました。その一つがセッテピエゲです。芯地と裏地を使わないので、しなやかな着物の生地そのままの風合いを味わうことができます。

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――それは実際に手に触れて試したくなりますね。
はい、ポップアップストアなど出店する機会も作るようにしています。

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ネクタイやポケットチーフだけでなく、ユニセックスアイテムのネッカチーフもあるので男女問わずお楽しみいただけます。

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出店時には私も接客します。皆様にお会いできるのを楽しみにしています。

最後に

デッドストックシルクや着物をアップサイクルするrenacnatta(レナクナッタ)の大河内愛加さんのインタビューをお送りしました。
取材させていただいた私たちもサステナブルな観点で注目していましたが、一つ一つの商品に込められた思いと考え抜かれたデザインに思わず目を奪われました。サステナブル以前に、こんな素敵なストーリーのあるモノを身に着けてみたいと感じています。

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