私が私でなくなる前に

自分の手が自分の手なのか分からない
今立ってる場所が球体の辺なのが分かる
靴ってどう履くんだっけ
雪が集められて山になっている
何かがあそこから出てくるかもしれない
雪解け水に滑り止めの砂利が混じっていて足を切った
いつの間に電車に乗っている
電車に落ちてる薬の抜け殻が誰のものか分からない
家の鍵かけったっけ
阿部真央が爆音で頭に流れている
乗客全員に聞こえちゃうんじゃないかってくらいに
怖い怖い怖い怖い
なんで電車乗ったんだっけ
どこに行くんだっけ
窓にはスウェットだけで裸足の僕が写っている
不安で死にそうな顔をしている
名前も知らない駅で降りた
ベンチで座り込んでいたら駅員さんに声をかけられたので逃げた
きっと敵なんだあいつらは
外に出ると警官が数人いて僕をまちかまえていた
パトカーの中は暖房が効いていて嬉しかった
コップにずっと我慢してた尿を出しながら
幸せだなぁと感じた
スタンプみたいなので取られた指紋は可愛くて好きだな
留置所で同室だった女は毎日自殺しようとしてた
裁判所の床はスニーカーで歩くとキュッキュッって言うんだよ
楽しくなっちゃって何回も床に足を擦り付ける
弁護士との打ち合わせ通りに話すのは幼稚園のお遊戯会みたいで懐かしくなっちゃってちょっと泣いちゃった
お弁当持たされてるあいだはあの家に帰らなきゃ行けないんだ
悲しいな
眠剤沢山飲んでお風呂に入ろっと
暖かいな
友達に電話してたら意識が遠のいていくから何話したか覚えてないや
呪いになっちゃったかな

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