いきもの
青々としたはらっぱの向こう
草は生い茂り
しっとりと水滴を含んでいる
少し霧がかかっていて
影はいつもより近くに見える
2本のツノがすっとそびえ立ち
2つの目がこちらをじっと見ている
ずっと、ずっと見られている
思わず息をひそめる
動いてはいけない
片方の耳が小さく動く
湿った鼻が小さく震える
(きみはどこから来たの?)
となりの村から
(きみはニンゲン?)
わからない…
(そう… )
じゃあ、あなたはなに?
(ボクもわからない… けど、ボクはきみのことが、なんだかスキだよ)
ありがとう。わたしもあなたのことが、なんだか、スキよ
(ありがとう。)
大きな目で
いっかいだけ瞬きをして、
しなやかなその背中を見せて
木陰の中へ
消えてしまった
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