行きたいところも行けないこんな世の中じゃ…POISON

ただいま令和3年8月16日、目下コロナ禍である。
全国の感染者は日に日に高くなり、未だに収束の見通しも見えず社会は混乱している。

今までだったら私も、家族と共になんかしらの施設に赴き夏を満喫し、残された大量の宿題を頭の片隅から消し去ろうとする子供らの首根っこを掴み、机に齧りつかせ目を光らせてたであろう夏休み。
それは脆くも崩れていた。

コロナ禍で2回目の夏。なんなら去年よりもさらに厳しいこの状況…。
ノミの心臓よりも小さい肝っ玉を自負する私にとって、今世の中の全てが危険地帯。
東にコホンとする人あれば急いでその場から退却し消毒、西にクラスターが出たと聞けば子供達がそこに行っていないか確認する毎日。
正直いって疲弊している、心が。


あれは高校の時だったかあまりやる気のあまりない生物の教師が授業の一環として映画鑑賞を好む人で、たまたま見せられたのがアウトブレイク。全米が泣いたかどうかは知らないが、サルから謎のウイルスがひょんなことから人に移って、何やかんやする話。

あれがまぁ見事に貞子級のトラウマになり、夜寝る間際にその記憶が蘇り看護師の母を叩き起し、しこたま怒られて泣きながら寝たのを今でもハッキリと覚えている。

「だって貞子ならお祓いとかすれば何とかなるけど、未知のウイルスなんてどうにかなるようなもんじゃないじゃん!!」
あまりの怖がりようにキレた母に、号泣しながら上記のようなことを反論した気がする…。
母は笑いながら、「そんなの現代科学や医療が発達してるんだから、いくらでも防げるんだよ。」そんなふうに呆れたように言っていた。
母は超現実主義者でとても厳しく、私達はあまり仲の良くない親子だった。


あれから20年、私のくだらないトラウマは現実になった。


あの時の私を鼻で笑った母は、10年前に眠ったままこの世を去った。

私は未だにその事を消化しきれていない。

母が生きていたらどんな事をいうのだろう。
母が生きていたらどんな事に気をつけるのだろう。
毎日心の中で問いかけるけれど、その答えは未だに聞こえてこない。

母が死んだ事を受け入れられずに来た私は、法事以外で墓参りをした事が一度たりともなかった。
千の風ではないが、母は父方のお墓に入るのをそこそこ嫌がっていた。
母と犬猿の仲であった祖母がいるから、海にでも撒いて欲しい。
生前の希望を10年前の私は叶えられなかった負い目もあり、自分から行きたいと思うことはほぼなかった。

しかし、去年のはじめ子供に言われた。
「おばあちゃんは死んじゃったけど、お墓参りって行ったことないね、お墓ないの?」

ただの純粋な興味だったのかもしれない。
アニメか何かで見たりしたんだと思うが、墓参りの記憶がないという。
そういえば直近の法事もインフルエンザにかかり不参加。
その前はまだ未就学児で法要の木魚にテンションがあがり手がつけられず、大雨の中の墓参りは危険ということで車に強制連行されてたな…と記憶を辿ってみると確かに未経験であることに気がついた。


それなら春のお彼岸に、おばあちゃんのお墓参りに行こうねと約束して早1年半。


コロナ禍ですがな。
どこにも行けないやないかい!!!!



楽しみにしていた映画も、毎年恒例の家族旅行もプール三昧の日々も。


全部無し。毎日、テレビの向こう側を羨む日々。

不要不急の外出を控えろっていう政府、無関心な人の群れ、医療従事者のため息。

楽しいはずのドラマやバラエティーですら、ちょっと距離が近すぎやしないか?とヒヤヒヤ。
大丈夫なの?が先に来てしまって、思う存分楽しめない。
ご飯が美味しくない。これは元々、でも最近とみに腕が落ちた気がする。
買い物も必要最低限、猿以上子供以下の者は連れて行かない。想像をはるかに超える行動をするから。

どこにも行けないからフラストレーションが溜まる子供達、それをいなす事すらも疲れてしまった。最近は笑顔が上手くつくれない。
おかしい、いつからこんな事になったんだ。

これもコロナのやり方なのか…。

ワクチン?いや、予約すら出来ませんけども。
子供連れて電車で2時間かけて自衛隊の集団接種に行くか?
いや、その間に子供達に感染したら?

いや、無理だ。
絶対心折れる。
立ち直れない、だから行けない。


おばあちゃんのお墓参り?ごめんそれも無理。
おばあちゃんのお墓は都内だから、激戦地にわざわざ身を投じることは出来ないんだよ。
私は死んだ親よりも生きているあなた達を守らなきゃならないと思ってるし、それが不器用な私のちっぽけな親心なんだよ、知らなくていいことだけれども。
普段の私は、怒ってばかりの鬼のような母だと自覚している。
でもワクチンすら打てない子供達がかかることだけは、絶対に避けなければならない。
もちろん私だって、感染したくないしさせたくない。



だからごめん、お母さん。
今年も貴方に会いに行けません。



こんな行きたいところも行けない世の中を貴方はどう見てるの?

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