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飯田有抄のショパコン日記32〜角野隼斗さんを入魂エール耳で聴く!

全国の”にわか親戚”(妄想)の皆さま、お待たせいたしました。角野隼斗さん3次のステージ、客席でどのように響いていたのか、この耳で捉えたことをお伝えいたします。

1次・2次よりも、とてもリラックスした表情の角野さん。4つのマズルカ Op.24では、1番から4番まで、徐々に立体感を高めていく演奏。ショパンの音楽が時折ふと見せる幸福感とともに、角野さんもふわりと笑顔を浮かべ、なにより演奏することへの喜びが自然と湧き出ているようでした。

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「幻想ポロネーズ」ではここぞという場面でのみ効果的に力強いアタックを繰り出し、節度あるダイナミクス変化で彩ります。楽器の放つ伸びやかな持続音を存分に聴き届け、間合いも大切に構築していきました。
強靭なタッチを出し続けたり、派手な変化を瞬発的につけ続ける奏者も多い中、角野さんの音楽作りは線が細いと言えば、細いのかもしれない。それでも、ショパンの音楽をどう描くか、その提示の仕方として共感を覚えるものでした。

このラウンドで、角野さんの弾き姿で印象に残ったのは、上半身から無駄な動きが一切止まり、大きな音楽的アーチを生み出そうとする場面があったこと。ソナタ第2番「葬送」で特にそれが顕著で、淡々とエネルギーを充満させるかの如く、重苦しい行進の足取りを積み重ねていきました。続く終楽章ではただひたすらに音の滲みを美しく形成。曲想的にこのソナタで終わることを選ばず、最期はスケルツォ第3番で堂々と締めくくりました。

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1次、2次、そして3次と、角野さんの演奏はどんどんと表現のレンジが広く深くなっていったように思います。音色の幅も、ダイナミクスの調整も。まだまだ角野さんの音楽的快進撃は続く。そう思わせてくれるステージでした!

※記事の速報性を上げるため、写真は2次予選のときのものです。
写真:©Wojciech Grzedzinski/ Darek Golik (NIFC)


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