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飯田有抄のショパコン日記40〜命日に捧げられるレクイエム

ショパンが永眠したのは1849年10月17日午前2時頃。毎年、ショパンの命日には、彼の心臓が眠る聖十字架教会では記念コンサートが行われています。曲は、ショパンが自分の葬儀で演奏して欲しいと願ったモーツァルトの「レクイエム」です。

今年の指揮はヴァーツラフ・ルクス、チェコのピリオド楽器のオーケストラ「コレギウム1704」、合唱は「コレギウム・ヴォカーレ1704」、独唱はシモナ・シャトゥロヴァー(ソプラノ)、サラ・ミンガルド(アルト)、マキシミリアン・シュミット(テノール)、ジャン・マルティニク(バス)の演奏です。こちらもYouTubeでライブ配信が行われました。

ルクスによるレクイエムは凛々しく颯爽とした演奏。聖十字架教会は音が混濁するほど残響が長くはなく、それでいて音楽ホールで耳にするのとはまったく違う柔らかな音の立ち登りが美しかったです。オケも合唱も指揮者も独唱者も、みんな近い距離なのに、合唱(とくにソプラノ)が遠くから聴こえてくる立体的な感じは、やはり特別なものを感じます。

それにしても、独唱者と指揮者が、会衆席の間の通路にみちっと横並びで、テノールのシュミットがやや歌いにくそうなのがどうしても気になってしまいました。音楽に集中できなくなるので、なるべく気にしないようにしたのですが、配置はもうちょっとどうにかならなかったのでしょうか(苦笑)。でも演奏は素晴らしかったです。

それにしても、命日の追悼コンサートということでありながら、はやり中継が入るということで、真っ白な照明ががんがんに焚かれ、演奏もレクイエムだけれど、どちらかというと晴朗な響きでしたから、全体的に「追悼コンサート」という言葉が放つイメージとはややかけ離れた印象を持ちました。
先日、一人で平日に訪れた教会内は、ひっそりとして暗かったので、とても落ち着く雰囲気でした。それと今日の印象とは、かなり違います。

祝祭的とまではもちろん言いませんが、意外に明るい。日頃お祈りで訪れる地元の人たちにとっては「命日・追悼」といってもショパンほどの歴史的人物ともなれば、暗くしめやかな儀式といった形ではなく、歴史的記念日として讃えられる演奏会なのかな、という印象を持ちました。

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(演奏後に指揮者・独唱者に贈られたお花もヒマワリで、明るい雰囲気。)

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(真っ白に眩しい照明)

例年は多くの人が詰めかけ、教会内は立見の人たちでもびっしり埋まるとのことですが、今年はまだ状況が状況なので「そうでもない」というお話。それでも後ろには立見の人々がかなりいました。

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(ショパンの心臓が納められた柱)

終演後に撮影した祭壇です。

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美しいオルガン。この音色もいつか聴いてみたいですね。

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(写真:飯田有抄/ピティナ)

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