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赤血球

赤血球の全貌:機能、生成、代謝、検査

1.赤血球とは

赤血球は血液中を流れる円盤状の細胞で、体内で最も多く存在する細胞の一つです。主な機能は酸素と二酸化炭素の輸送であり、細胞と組織に酸素を供給し、代謝の副産物である二酸化炭素を除去する役割があります。

2.ヘモグロビンとは

ヘモグロビンは赤血球内に含まれるタンパク質で、酸素と結合する能力を持つ。これにより、酸素を肺から体の各部位へ運ぶ役割を果たす。鉄を含むヘモグロビンは赤血球の赤色の原因となっています。
1酸素(O2)

  • 結合しやすさ: ヘモグロビンは、酸素と容易に結合します。肺の毛細血管では酸素分圧が高いため、ヘモグロビンは酸素と結合し、酸素化ヘモグロビン(Oxyhemoglobin)を形成します。

  • 結果: 酸素化ヘモグロビンは赤く、これが健康な人の血液の明るい赤色の理由です。

二酸化炭素(CO2)

  • 結合しやすさ: ヘモグロビンは、二酸化炭素とも結合しますが、酸素との結合よりも弱いです。体の細胞で酸素が使用されると、二酸化炭素が産生され、これが血液に放出されます。ヘモグロビンは部分的に二酸化炭素と結合し、それを肺まで運びます。

  • 結果: 二酸化炭素と結合したヘモグロビンは、炭酸ヘモグロビン(Carbaminohemoglobin)と呼ばれます。ただし、血液中のCO2の大部分は、炭酸水素イオンとして存在します。

一酸化炭素(CO)

  • 結合しやすさ: 一酸化炭素のヘモグロビンとの結合親和性は非常に高く、酸素との結合よりも250倍以上も強力です。そのため、一酸化炭素が存在する環境での呼吸は危険です。

  • 結果: 一酸化炭素とヘモグロビンが結合すると、カルボキシヘモグロビン(Carboxyhemoglobin)が形成されます。このカルボキシヘモグロビンは、鮮やかな赤色をしていますが、酸素を運ぶ能力が失われるため、体内の酸素供給が大幅に減少します。これが一酸化炭素中毒の主な原因となります。

3.赤血球の寿命と代謝過程

赤血球は平均で約120日の寿命を持つ。老化した赤血球は脾臓で取り込まれ、ヘモグロビンはヘムとグロビンに分解される。ヘムはさらにビリルビンに変換され、胆汁の成分として使用された後、便として体外に排出される。

4.赤血球の産生とエリスロポエチン、成熟

赤血球の産生、エリトロポイエシスは骨髄で行われる。この過程は腎臓で生成されるホルモン、エリスロポエチン(EPO)によって調節される。酸素不足の際にはEPOの分泌が増加し、赤血球の産生が刺激される。
骨髄内で脱核し、赤芽球から赤血球に成熟する。

5.赤血球の合成に必要な栄養素

赤血球の合成には以下の栄養素が必要とされる:

  • 鉄:ヘモグロビンの主要成分

  • ビタミンB12:DNA合成に重要

  • 葉酸:DNAとRNAの合成に要される

  • ビタミンC:鉄の吸収を促進する

6.赤血球の形状と血液型

赤血球は二重凹の円盤状をしており、これによって酸素輸送の効率が高まる。血液型は赤血球の表面の抗原によって、A型、B型、AB型、O型の4つに分けられる。

7.赤血球の検査とその意義

  • ヘマトクリット値

    • ヘマトクリット値(Hct)は、血液の全体量に対する赤血球の体積の割合を示すものであり、血液の濃度を示す指標として使用されます。言い換えれば、血液の中でどれだけの部分が赤血球によって占められているかを示す値です。

      • 基準値:男性で約40-54%、女性で約36-48%。

      • カットオフ:基準値を下回ると貧血、上回ると多血症の可能性。

      • 考えられる所見:脱水、赤血球増加症、貧血。

  • 赤血球数

    • 基準値:男性で約4.5-5.5×10^6/μl、女性で約4.0-5.0×10^6/μl。

    • カットオフ:基準値を下回ると貧血、上回ると多血症の可能性。

    • 考えられる所見:鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、真性多血症。

  • 赤血球沈降速度(ESR)

    • 赤血球沈降速度(ESR: Erythrocyte Sedimentation Rate)は、一定時間内に赤血球が沈降する速度を測定する検査です。この検査は、特に炎症の存在や程度を示すマーカーとして用いられます。炎症が起こると、血中のフィブリノーゲンや他のタンパク質の濃度が上昇し、これにより赤血球がまとまりやすくなり、沈降しやすくなります。具体的な手法としては、血液を薄いガラス管に入れ、垂直にして1時間放置し、その間に沈降した赤血球の高さ(mm)を測定します。ESRが高値を示す場合、リウマチ、結核、慢性炎症、一部のがんなどの疾患の可能性が考えられます。ただし、ESRは非特異的なマーカーであり、高値を示すことが確定診断につながるわけではありません。他の臨床的所見や検査結果と組み合わせて解釈することが重要です。

      • 基準値:男性で約1-15 mm/h、女性で約1-20 mm/h。

      • カットオフ:基準値を超えると炎症の存在が疑われる。

      • 考えられる所見:リウマチ、結核、慢性炎症、一部のがん。


以上が、赤血球に関する基本的な知識をまとめた記事となります。詳しい情報や疾患に関するアドバイスは、医療機関や専門家の意見を取り入れることをおすすめします。

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