おかえり、未来

 私が愛した過去を、貴女は愛しているだろうか。或いは、憎んでいるだろうか。共に歩みたかった未来は、あの日潰えた。それでも、足跡は二列になっていたはずだった。

 波打ち際をひとり歩いた。湿気と初夏の熱気を肌で感じ取るが不愉快ではなかった。耳には、ふたりでイヤホンを分けあった曲が流れている。しばらくの間は厭われた曲も、今ではまた、美しい、美しい音色に戻っていた。

 ふと足元を見ると、綺麗に輝く貝殻があった。私はそれを拾い上げ、胸ポケットにしまいこんだ。この貝殻は、私を愛してくれるだろうか。それはわからないが、私はこの貝殻を愛することができそうだと感じた。

 足跡を波がさらって行き、潮の香りだけがそこに残った。

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