心に飾るヴァニタス

 ヴァニタスは、芸術の分野で用いられる概念。絵画の中に、髑髏や朽ちゆく花、果物、肉や、壊れる時計など、頽廃を入れることで死の自覚を呼び起こす。

 近い概念としては、「死を想え」といった意味の「メメント・モリ」や、「ダンス・マカブル」が挙げられるだろうか。

 いずれも、「死」を強く意識させる。慎重、ネガティヴを思わせる概念だが、「死を避けることは出来ないのだから踊れ」といったニュアンスも存在する場合があるそうだ。


 私の生き方は、其れに共感的な立場を取っている。といっても、常に死にたいと考えているわけではない。むしろ、周囲には「130歳まで生きてみせる」と宣言している。


 日常の中で常に「死」を意識し、「明日死ぬかもしれないし、常に死へ歩んでいる」と考えている。

 苦労に苦労を重ね、努力をして結果を出そうとしても、志半ばで死ぬかもしれない。流した汗も涙も血も全て無駄になるかもしれない。当然、苦労を重ねた末の結果は美しい。血のにじむ努力の末に得たものは美しい。

 しかし、私は結果を出すまで待てない。私は明日死ぬからだ。

 だから、考え方を変えた。結果だけでなく、過程其のものを飾ろう、と。

 努力に努力を重ねた結果、楽しみも美しさも得られる生き方ではなく、努力を楽しみ、美しさを求め、其の末に結果も得る。其れを心がけている。

 命は散りゆく花だ。乾きや寒さにも負けず、最後に花を咲かせる美しさを賞賛しながら、私は乾きも寒さも、楽しさにしていたい。途中で死んでも、笑顔でいる時間が一秒でも長くなるように。


 私は明日を信頼しない。明日、私は死ぬからだ。だから、今日が楽しくなくてはいけない。其のためなら、どのような苦労も努力も厭わない。

 其れが、私の心に飾るヴァニタスだ。

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