性格検査の長所と短所(一般的なお話)

今回はMMPI-3の特徴を理解するために、性格検査全般の長所と短所について大まかに振り返りたいと思います。どちらかというと公認心理師や臨床心理士の試験勉強してる人に有益かも。ただ質問紙法は使わねえぜ!と決めている人にもこの記事も含めて読んでほしいなあ、この一連のNote。

質問紙法の長所と短所

長所1:実施や採点が比較的簡単
 簡単というと語弊があるかもしれませんが解釈の前段階のスコア算出までは比較的簡単だということです。解釈はどの心理検査も簡単ではないわけで、そこはもちろん手を抜かずにやらなくてはいけません。
長所2:統計的・客観的な処理が可能
 あんまり言うと投影法の大家の先生に怒られそうですが、バウムでもロールシャッハでも完全に客観的な処理ってすごく難しいことですよね。理系も納得させられる統計的・客観的な処理は質問紙法が一番です。

短所1:受検者の言語能力次第
 これは動かせない短所です。言語能力が何らかの理由で十分でない場合、回答できないです。意外と小難しい質問項目の心理検査多いんですよね。大人でも回答に迷う人結構いたりします。
短所2:回答が歪曲されやすい
 受検者が「この質問項目はこういう意味っぽいな。よく見られたいからわざと違う風に答えよう」なんてことができるということです。MMPI-3はこれに対抗していろいろやっているのですが、それはまた別のお話。
短所3(?):質問できない無意識の部分は分からない
 言葉で聞かれて意味を考えて回答するのだから、無意識の部分はわからない!それが投影法と質問紙法の決定的な差だ!みたいに言われることはありますが、果たしてそうかなと私は思っております。これもまた別のお話。

投影法の長所と短所

長所1:回答が歪曲されにくい
 確かに投影法で回答を歪曲するのは一見難しいように思います。ただ弱点もあると思っておりまして、例えばロールシャッハの図版って枚数がそれほど多くなく事実上公開状態だし、バウムだって解釈本が一般販売されちゃってます。詳細はいずれ。
長所2:無意識が反映されやすい
 これは投影法一番の長所なんですが、回答が歪曲されにく(長所1)で述べたのと同じことで、受検者の予習によって失われてしまう長所でもあると思っております。

短所1:時間がかかり受検者への負担が大きい
 これは自分で受けてみたらわかるんですが、ロールシャッハに答えるのは結構心的エネルギー必要なんです。MMPI-3は質問紙法の中だと一番時間がかかりますが、それでも短縮されて30-40分になっています。ロールシャッハは2時間近くかかりうるので大変です。
短所2:解釈が主観的になりやすい
 投影法は統計的処理に持っていく、あるいは客観的に分析するのが難しいです。比較的分析方向が固定的なP-Fスタディだって難しいです。分析するには経験と技量が必要であり、裏を返せばどれだけの人がきちんと使いこなせているのかという話になります。

作業検査法の長所と短所

 もとい内田クレペリン検査の長所と短所になりますがざっくり紹介。
長所1:実施や採点が比較的簡単 質問紙法より低年齢でも実施可能
長所2:回答が歪曲されにくいとされていますが、これは疑問です。
短所1:得られる情報が多くない
短所2:回答が歪曲されやすい むしろ歪曲されやすいが正しいかと
短所3:本当に性格が測定できているのか?
 
といった感じです。

今回のまとめ

  • 現場では大体そうだと思いますが、質問紙法と投影法を併用しながら、場面に応じた検査を必要することになるでしょう。個人的にはMMPI-3の普及とともに質問紙法の重要性は高まっていくと考えています。

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