レビュー:ララバイ・ハミングバード(リメイ、KiRi*)

タイトル:ララバイ・ハミングバード

作者:七枝

キャスト:
飛鳥 役 リメイ
紗希 役 KiRi*

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この上演の空気感を一言で表すと『ジュブナイル』になると思う。

実年齢が若い演者さんたちがただそのままお芝居をしているのではなく、ちゃんとティーンの気配を意識したお芝居をしていると感じた。

何処か背中がソワソワするような気配がこの作品にはとても効果的に働いているように思う。

飛鳥と紗希の、劇中での空間的な意味での距離を、モノローグと行ったり来たりする中でササッと表現するのは流石の技巧。

飛鳥と紗希の二人芝居は作中の舞台と空間を表現しながらシームレスに繋がっていく。

この感覚は普段なかなか味わえない。連携の妙と言っていい。

誰かを批評したいわけではないが、多くのプレイヤーが自分の役(役割)に徹してしまう側面を持っている。

それぞれが役に立っているけど何故か場のリアリティや話のつながりが弱くなるような感覚を覚えることがある。

しかしこの二人のキャラクターは独立しながら作品としてちゃんと繋がっている。

そのため、荒涼とした世界観、地理的にも大きなスケールの作品でも確かな存在感がある。

ここでの存在感とは、飛鳥と紗希というキャラクターがララバイ・ハミングバードの世界の中にちゃんと居る、という意味である。

紗希は温度差の大きいお芝居をする。

飛鳥は全体的に大きく振る舞うがこの紗希の一瞬一瞬の温度差にしっかりと合わせていく。

飛鳥が感情と表現で舞台を立体的に膨らませば、紗希がリズム良くクイックに切り返す。

こういうある種の、お約束的なやりとりをしながらも劇のスピード感は一切殺してない。つまり食傷していない。三十余分が短く感じる。

このペアはいぶし銀の熟年夫婦みたいな挙動をする。
テクニックや細かい表現に頼り過ぎず、相手との掛け合いのタイミングと距離感でリアリティのある物語を表現していると思う。
音声が少し乱れた部分もあったが、タイミングと距離感がとても正確なのでシンプルに説得力があるのだ。

お芝居の構造的な強度で支えられた正統派ジュブナイル、ラスト二分三十秒の切なさも過剰にクドくなりすぎず、サラリとほろ苦くて実に良かった。


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