魔法詠唱の覚書 その2

魔法詠唱のための意識狭小の手引き

魔法詠唱は空間のリソースを用いて発動させる現象である。
従ってその大元のほとんどは環境や物質などの外的要素となる。
ただし、術者は少しでも魔法の効能を高めるために内的要素へ働きかけることができる。

一部の例外を除き、魔法詠唱・術式呼称によるトリガー時には
術者の交感神経系が爆発していることが望ましい。
円滑にこの状態に入るため、魔法詠唱は術式のセーフティ・ロック解除であるとともに
マントラ的役割を果たす。

この際、術者の精神は発動させる魔法に対してトランス状態にあることが重要になる。
ここでいうトランス状態とは、集中力の狭小つまり魔法詠唱以外のことを意識の外に追い出した状態である。
トランス状態に入るために、術者は様々な取り組みを行う。

特に多用されるのは、飲酒や喫煙などによる薬理的内因の付与である。
酒、タバコ、茶などの興奮作用を持った薬物を経口で摂取するのが望ましいとされる。
音楽や写真など、人によって視聴覚を用いた興奮も選択肢には上がるが、
その効率は経口摂取に比べると劣るという説が強い。

アウトロー・ワンダラーズの存在

行政の魔法の監視と管理の網から逃げ延び
討伐対象として挙げられている
通称「アウトロー・ワンダラーズ」のリストは
以下の通りである。

ゴーダ・カオル


斧への強烈な憧憬と傾倒により
巨大な具現化させる術式『破壊天』を用いる。
リソースが術者の脳内に存在するため
行政の監視・管理から漏れたものと推測される。

生皮剥がしのリトルジョン


自身が生理的に受け付けないカエルに相手を変質させる
術式『フロッグ・フラッグ』を用いる。
精神的自傷行為をリソースとし、また本人が常に錯乱状態にあり
敵味方の区分なく術式を乱発するため、討伐作戦は難航している。

嗜虐のクレオパトラ


相手を強制的に脱水症状にする術式『ドライエン・ハイ』を用いる。
リソースは相手への嗜虐欲求と推測される
極めて珍しい副交感神経系優位の術式であるため
行政は敢えて討伐を実行せず、情報収集のために泳がせている節がある。

トリガーハッピーボウイ


相手を無呼吸で全力殴打する術式風物理攻撃『ガトリング・ガッシュ』を用いる。
リソースは相手の技を受け切る美学、と本人は思い込んでいるが
実は術式ではなく、ただの物理攻撃。彼は世にも珍しい魔法素養のない人間である。
しかしながら、強力なプラシーボが彼の体に計り知れない打たれ強さを与えている。
魔法詠唱ではないため、監視・管理の対象外ではあるが
あたり構わず喧嘩をふっかけるため、討伐リストに追加された。

スモーキンビリー


タバコの煙をリソースとし、白い弾丸状のエネルギーで相手を撃つ術式
『愛という憎悪』を用いる。
裏社会を生きるヒットマンであるが、もっぱら人格者との評判である。
彼の術式のアンプリファイアが『喫煙禁止エリアでの発動』であるため
様々な団体からのクレームが山積みになり、討伐リストに追加された。


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