【言語】英語の歴史と文章の書き方

先日、英語論文の書き方についての本を読んでいたんだけど、そこに英語の歴史が概略的に書かれていて面白かったので書いてみたいと思う。

3年もイギリスにいて英語を話していたのに、しかもただ話していただけではなく、大学でのエッセイや論文の書き方についても学んでいたにもかかわらず全然知らなかったんだ。

そもそもイギリスって何語を話しているかみんなは知ってる?

『当たり前でしょ』って思う人が大半かもしれないけど、実は意外と知らない人も多いんだよ。

初対面の人に『イギリスに3年ほどいました』というと、『イギリスって何語ですか?』と平然と聞いてくる。

その度に僕は日本人の素養のなさに呆れるんだけど、まぁなるべく表情には出さないように我慢して『英語の「英」は英国(イギリス)の「英」ですよ』と説明する。

『あ、そうだったんだ』と言われると2度呆れることになる。

つまり、そもそも英語ってのはイギリスの言語なんだけど、その起源は2つあるらしい。

大きく分けるといわゆるゲルマン系とラテン系だ。

この二つの違いは日本語でいうところの和語と漢語の違いのようなもので、口語で使う言葉と硬い表現で使う言葉の違いだ。

まずゲルマン系の言葉を話す人たちはヨーロッパ北部に住んでいたんだけど、5世紀に彼らがブリテン島(現在のイギリス本当だね)に侵入してきた。

その侵入してきた民族がアングル族、サクソン族、ジュート族だったんだって。

イギリス人のことをアングロサクソン人と言ったりするんだけど、それはイギリス人の主要構成民族の総称であり、このアングロ族とサクソン族からきているんだ。

そして、この3つのゲルマン系の民族を総称してEngliscと呼んでいたそうなんだけど、そのEngliscが住み着いた土地ということでEnglandと言われるようになったんだね。

イングランドというとグレートブリテン(イギリス)の中でも中心を占める地域で、イングランド人やイングランド語のことを我々はEnglish(英国人・英語)と呼んでいるんだね。

これがゲルマン系の英語の始まりなんだ。

そして、6世紀の終わり頃になるとキリスト教がブリテン島にも入ってくるようになる。

キリスト教の教典や教会で使われる言葉はラテン語だから当然英語の中にもラテン語が混じってくる。

多くの日本人がローマ字読みできなくて嫌になる長めの英語は大体ラテン語由来だね。

例えば、"superior" や "inferior" 、 "senior" "junior" などは全てラテン語由来の英語なんだよね。

そして11世紀の初め頃、英語という言語に大きな変化が生じたんだ。

それはフランスによるイングランド全土の支配によるものだ。

それによってノルマン系のフランス人が支配階級になっちゃったから、身分の高い人が使う英語みたいな感じで英語の中にフランス語が急激に入ってくるようになるんだよね。

だからこの時代くらいから身分の高い人はフランス語やそこから派生した英語を話すようになるんだけど、その一方で支配された側の身分の低い人たちはいまだにゲルマン系の英語を話していたんだ。

こうして英語の中にも二重構造が生まれたんだね。

例えば、農民たちは牛のことを "cow" と言い、羊のことを "sheep" と言い、豚のことを "swine" と言った。

そして、支配階級のフランス人たちはそれらを調理した "beef" や "mutton" "pork"を食べていたんだ。

僕たちも『豚』の英語に対してswineよりもporkの方が馴染みがあるよね。

これも元々はフランス語系の言葉なんだ。

てな感じで、ざっくりと『日常会話で使うゲルマン系英語』と『お硬い文章などで使うラテン系英語』という二つが生まれたんだね。

そして、その二つは同じものを指していても、その語彙が持っている感情やイメージは少しずつ異なっていて、その微妙な違いを蔑ろにしてはいけないらしい。

ここまでの説明でなんとなくわかると思うけど、レポートや論文を書く際にはラテン系の英語が好まれる。

そうだな、中学生が最初に英語を習う際に出会う "ask" "buy" "get" "give" などの馴染みある英語たちはみんなゲルマン系の英語なんだけど、確かに大学のレポートでこれらの単語ばかり使って書いてると減点されるんだよね。

だから、こいつらをラテン系の語彙に言い換えて書く必要があるんだよ。めんどくさいよね。

また日本語でもそうだと思うんだけど、同じことを言ってるんだけど、言い方一つで印象がまるっきり変わることってあるでしょ?

例えば、ストレートに言い過ぎると良くないから遠回しな言い方にしてみたり。

『死ぬ』という言葉を使うのはストレートすぎるから『息を引き取る』と言ったりするよね。

そんな感じで英語にも実際の辞書的な意味と、微妙なニュアンスの違いを含む意味ってのがあって、こいつらを『ディノテーション』『コノテーション』って言うんだ。

『ディノテーション』が辞書的な意味で、『コノテーション』が微妙なニュアンスの違いを含んだ言葉ね。

例えば、『安楽死』のことを "euthanasia" って言うんだけど、これを "legal murder" って言うこともできるんだよ。けど、こっちの方が少し印象は悪い。

逆に、"mercy killing" とも言うんだけど、こっちの方が印象を良いんだよね。

てな感じで同じことを指したい時でもコノテーションを変えて微妙な感じの違いを伝えることも重要らしい。

イギリスに住んでいた時、大学の友達が使っていた英語ですごく印象的に残っている言い回しがあるんだよ。

そいつとは別のやつですごく金遣いの粗いやつがいるんだよ。

バイトした金は大体飲み代に消えて、酔ったら暴れるっていうめちゃくちゃめんどくさい奴なんだけど、そいつの話をしてたんだよね。

『金遣いが荒い』ってのは一言で言うなら "extravagant" とかって言うんだけど、他にも "spend money wastefully" とか "wasteful spending" って言ったりするの。

それ以外にも『金遣いが荒い人』って意味で "a spendthrift" て表現もあるんだよね。

こいつらはあんまり印象が好ましくないんだよ。

けど、その時に彼はその金遣いが荒い奴の説明をするときに "He isn't financially wise" って言ったんだよ。

直訳すると『彼は財政的に賢くないんだ』って意味なんだけど、つまりお金の使い方が上手くないってことの遠回しな表現なんだよね。

これもなるべく印象が悪くならないようにするための配慮だと思うんだけど、これも一つのコノテーションだ。

こんな感じで英語にもさまざまな表現があって、コンテキストや伝えたいニュアンスの違いによって違う語彙を適切に選び出さなきゃいけないんだよね。

大変って思うかもしれないけど、逆にそういうことを知った上で英語を見ると面白いかもしれないね。

英語の歴史と文章の書き方。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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