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「当たり前」の奇跡:映画レビュー『パターソン』(ネタバレなし)

※最初のマッチの詩がとても良かったのでイラストにしてみました。

アメリカのニュージャージー州に実在する『パターソン』という街を舞台にした物語。


住む場所と同じ名前のバス運転手、パターソンは、どちらかというと感情を豊かに表現するタイプではない。その代わり、日々自分の周りで起こることにヒントを得て、自前の『秘密のノート』にポエムを書きためている。その多くが、愛する妻に向けたもののようである。


序盤、自由奔放な妻に、パターソンは少し手を焼いているように見えた。しかし、物語が進むにつれ、彼がどんなに妻を愛しているのかが分かってくる。そして、パターソンを理解し包み込む妻もまた、愛おしく、美しい。


物語が進行するにつれ、私は謎の不安に駆り立てられていく。


「何か、この夫婦にとんでもない不幸なことが起こるのではないか?突然わんこが誘拐されてしまうのではないか?この何気ない日々の幸せが、一瞬で壊されてしまうのではないか?」


しかし、それはこの映画においては無用の長物である。


普段観ているコンテンツの影響からだろうか、無意識のうちに刺激を求めてしまっている私自身に問題があるのだろう。


パターソンの美しい景色に足を止め、街の人々の声を聴き、持っているノートとペンで詩を奏でる、豊かさ。
私は、それがいかに尊く美しいことであるかに気づけなかったのだ。大反省。


同じようでちょっとずつ違う毎日、そして愛する人と毎日過ごせる奇跡。
決して「当たり前」ではない幸せを、後で後悔しないように、その一瞬一瞬をかみしめて暮らしていくべきなのだ。


2020年、コロナ禍の前と後とで、私たちの「当たり前」は一瞬で崩れ去った。今命があることを感謝し、毎日を生きなければ。


心に余裕のある暮らしを満喫する、ポエマー達がうらやましくてたまらない。

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