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2024年夏・新作RTS所感~BattleAces,Stormgate, ZeroSpace~

新作RTSの波が近づいてきた。
BattleAcesはすでにクローズドβのキーを配っていて次のフェーズのベータも近々予定されている。
Stormgateは7月30日に支援者向け先行アクセス、8月13日にアーリーアクセスを開始する。

筆者もStormgateオープンβ、BattleAcesクローズドβなどに参加したので軽く所感を記したい。
他の予定もあったためしっかりプレイしたのは数日程度ではあるが、どちらも一時ランキングTOP50に入る程度にはやっている。
残念ながらZeroSpaceは自分で触ることはできなかったので、配信を見ていてわかるような通り一遍のことしか言えない。

Battle Aces 日本語対応あり

内政をスピードアップしたことで10分で終わる軽量RTSであり、RTSというジャンルに新たな解釈をもたらした意欲作と呼びたい。
コンパクトにまとまったこのゲームは時間的にも要求スキル的にも他RTSタイトルと同時プレイし続けることが容易で、他のRTSが覇権を握ってもなお生き残りの目がある。

このゲームの特筆すべき点は、自分で種族・文明をデザインするかのようなシステムだ。

デッキには2種類の基本ユニット、2x2種のTier2ユニット、1x2種のTier3ユニットをセットできる

事前に8種類のユニットでデッキを組んで戦う。デッキには3つのセーブ枠があるので試合の合間に数クリックで容易に切り替えられる。
高レート帯で同じプレイヤーと連戦しそうな時は対戦キューを入れる前の数秒でデッキを切り替えて戦っている姿がよく見られる。
ある意味ではカードゲームに近いメタの流れがあるというわけだ。

現在のデッキに加えて、3種類のデッキを保存しておける

すべてのユニットの生産速度が0秒で、テックを上げて高度なユニットを作るための研究や、新しい内政地の稼働だけに時間がかかる仕様であるため、
テックを押すタイミングや内政地拡張を押すタイミングだけは大事だが、きめ細かな連続生産ができないことはディスアドバンテージにならない。

流石にマルチタスクやマイクロの余地も色々とあり、一番レートの高いプレイヤー(レート14000)はPartinGやClemなどの名の知れた人間が揃っているが、一方で開発陣の中にいる操作の遅いRTS初心者でも最高ランクのTop Ace(レート7000以上)に到達したという話があり、”Strategy”でしっかり勝てる作りにしていると言っている。

勝っても負けてもつい次のオートマッチのキューを入れてしまうような中毒性は流石David Kimと言わざるをえない。
彼はStarcraft2のバランスデザインをしていた時も、Random種族を使ってNAのマスターリーグにいたほどプレイ経験も豊富であり、そのへんの開発者とは一味違うのである。
かつてSC2でとんでもないバランス調整をしてしまった時のことなどはもう忘れても良い程の仕事をしている。

どちらのプレイヤーも自分がマップ左下でスタートする形で表示されるという完全に対称的なシステムなど、競技的な公平性もよく配慮されている。

頻繁にパッチが入ってユニットの強さが調整されているが、動けないワーカーを狙って内政を凹ませる攻撃が強く、ワーカー狙いとその対策を中心にメタが回ってきた感がある。ワーカーと軍ユニットで攻撃優先順位が変わらないため、ワーカーのいるグリッドの隙間に軍隊を入れてアタックムーブするだけで相手の軍隊をあまり相手にせずワーカーを狙ってくれるため、ダメージが確約される寸法だ。 

クローズドβ初期はユニットの解放に必要なクレジットに対して試合が終わった時に得られるクレジットが少なすぎて理不尽な相性負けをし続けるような事態も起こっていたが、途中から入手量が潤沢に修正されてすぐにユニットを解放していけるようになった。
しかしこれも色んなユニットを試してもらうための極端な設定らしく、将来的にはもう少しバランスの良いところを探るという話らしい。

思いの外早く始まった6月24日からのクローズドβでは、特にNDAなどを結ばず自由な配信を許し、配信者が視聴者へ渡すためのベータキーを配布するなど非常にオープンな形のコミュニティ作りをすでに開始していること、頻繁なアップデート情報もRedditで開示していることは、出す情報を慎重に選んで進んできたStormgateと対照的である。
クローズドβ中に公式なショーマッチがあったほか、非公式なトーナメントも公式Discordでアナウンスされるなど、ユーザーと良好な関係を築きつつある。


Stormgate 日本語対応あり


Starcraft2に比べると戦闘のスピードは確実にゆっくりしている。
そもそもユニットのDPSに比べて明らかにHPが高い。しかしならばこのゲームはカジュアル化・簡略化の方向にばかり進んでいるのかというと、どうもそうではない。
スキルを3つ持っているようなスペルキャスターユニットがどの種族にも複数いるし、どのユニットも何かしらの特殊な能力を持っている。
基本ユニットですら何か特徴のあるパッシブアビリティを持っている。投石機のような、かなり強烈な範囲攻撃もある。
ユニットではなくプレイヤー自身が使える、画面上部に常時表示されたアビリティまである。

スキルをいかに上手く使ってバリューを生み出すかというスキルゲーとしての側面があるのだ。
こうなってくると、一見ゆっくりとした戦闘スピードも、じっくりマイクロ勝負する舞台を整えるための仕掛けに見える。
どっしりした重量級のRTSと言っていいだろう。
まだTier3ユニットが導入されていなかったβですら大規模戦闘のやり甲斐はかなりのものがあったので、アーリーアクセス以降のさらなる昇華には期待できる。

格ゲーに見られるようなロールバック方式を取り入れて少しでも快適なプレイが追求されているのも本作の特徴だ。
遠くの地域とつながった時も比較的快適なほか、非常にpingの低いTokyoサーバーも存在する。

また、Stormgateは競技シーンに力を入れる姿勢が明確である。
ベータ段階での情報公開についてかなり慎重に進んできたFrost Giant Studioではあったが、競技シーンの展開が思いの外迅速で、2024年中は草の根eスポーツにフォーカスすると言いつつもグローバルチャンピオンシップを予定し、2025年には地域別リーグの設立まで予定されている。
もともとアルファテスト中から参加者向けのコミュニティトーナメントをAdico(かつて毎週AoE4の大会を運営したり、独自ランキングのATRを管理していた)が運営し、SteamFestで一時的にオープンアクセスになった際にはECGが賞金100万円以上の大会を開くなど、一定の地盤はすでに存在していると言える。

ZeroSpace 日本語対応不明

Starcraft2プロ、それも特殊な戦略を成功させてきたことで有名なScarlettやCatZがバランスデザインに関わっている期待作である。
まず目に付くのはとにかくユニットの種類の多さ、ユニットの育て方のバリエーションであり、果たしてこれほど変数がある中でバランスが取れるのか?と思わされるような大風呂敷が広がっている。
とにかく画面が賑やかなゲームであり、完璧なバランスを模索するというより頻繁にバランスアップデートを入れて、その時々の最適解を見つけるスピードランが上手いプレイヤーや研究グループが上に行くような方向性も考えられるのではないかと思う。
その線でいくと、AoE4やMOBAのような、少しバランスに穴があるけれどもBANpick制を導入して何とかしてしまうスタイルを取ることも考えられるだろう。
どのような方向性に進むにせよ、リリース当初に強いビルドを探す楽しみは一番あるゲームかもしれない。

今年の春にAlphaキーを購入できるようになってプレイアブルにはなっているものの、正式リリースやアーリーアクセスの時期に関する発表はまだない。
今のところ日本語対応はされてないが、そもそもオリジナルである英語以外の言語対応がまだ発表されてないだけなので対応の可能性はあるだろう。

SC EVo:Complete 日本語対応なし

SC1vsSC2が出来るようにしようというコンセプトのMODで、SC2を実質6種族にしてしまうMOD。
アマチュアが作ってるとは思えないレベルで頻繁にアップデートしながらバランスを洗練させている。
このMODが韓国で流行った影響でSC2を始めたSC1勢もいるとか。
流石にこのMODが覇権を握るとは思わないものの、面白い”新作”のひとつとして紹介しておく。
野良のカスタム部屋も建っているほか、NOTAKON配信やSC2JP初心者Discordなどでプレイされている。

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