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初音ミクの声がオケに埋もれた時の対策

割引あり

2024.1.12の記事


別に初音ミクだけの話ではなく、ボーカル全般に言えると思いますが、特にボーカロイドだったりSynthesizerVだったりの"なんか薄い"声が伴奏に負けちゃって聞き取りにくいと思うこと、ありますよね。

そんな時にボリュームを単に上げちゃう人はちょっと待って。それはあまり良い解決方法とは言えない。もっと根本的な問題から解決しよう。

まず、声が他の音に負けて埋れてしまう状況を視覚で例えるとこんな感じだと思ってください。

左に人がいるのわかりましたか?
そして、一度4人目がいると認識してしまうと、次からは別に画像を編集しなくても、今度はちゃんと居るように見えてきたと思います。

「そこに人がいる!」と認知することが"見える"為には結構重要だったりします。私は経験上、音でも同じことが起こり得ると考えています。

前提

前提として、人間には強い音(マスカ)が近くにあると弱い音(マスキ)は聞こえなくなるという「マスキング」という現象があります。
マスキングの現象にもいくつか分類があるのですが、その中でも本記事では、近い周波数帯域の音同士だった場合のマスキングを"根本的な問題"と捉えています。
まあアレンジ(編曲)に関わる部分ですから、制作工程の上流に位置しているわけですし…。

埋もれる時のピッチの動き

さて図1は、背景となる楽器の音に埋もれた初音ミクの声のイメージです。濃い紺色の棒がミクの声だと思ってください(実際はもっと複雑)。
以降この雑すぎるイメージで解説していきます。なお、図は五線譜のように左から右に時間が流れ、上下が音の高さを示しています。

図の真ん中あたりが背景のせいで見えにくいですよね。これが"聞こえない"部分だと思ってください。

図1

ピッチを動かしてみよう

さて、声が図2のように背景(楽器の音)の濃いところを避けていったらどうでしょう。紺色の線がだいぶ見えて来ましたよね。 これが聞こえないミクの声を聞かせるテクニックその1です。

図2

伴奏(背景の音)を工夫してみる

更に、背景の音を無くしたり薄くしてみたらどうでしょう。図3では左側の部分がクッキリしましたね。 線の左側の形は人が良く聞いている声の形に近いのです。すると聞いている人は右側の(後に鳴る)音を割と想像で補うことができます。 実質的に「聞こえてくる」わけです。これは伴奏(アレンジ)の変更が必要になってきますけどね。

図3

ビブラートも効果的

背景(楽器の音など)に歌が隠されてしまう現象を避けるために昔の人達は色々な工夫をしました。 例えばビブラート(図4)。音の高さを波うたせる事によって、背景の濃い部分から逸脱をして目立たせる、注意を惹きつける手法です。 これは音の高さが短期間に波打った時、振幅の平均あたりに音の高さを感じる仕組みを利用しているともいえます。

図4

おすすめしないけど

また、合奏の経験者ならご存知かもしれませんが、主役(リード)の楽器の音の高さをほんの少し、周囲とズラす事で目立たせる手法をご存知かもしれません。(図5)おすすめしないけど。

図5

伴奏が爆音で鳴っているような作品では、楽器の音を大きく聞かせたいという欲求から、初音ミクのボリュームをなかなか上げる事はできず、出来たとして違和感が大きくなるかと思いますので、こうしたピッチ編集やアレンジによる「音を目立たせて認知してもらう工夫」を推奨します。
まあそんなのやりたくないっていうなら…Melodyneの最上位モデルにあるサウンドエディターで強調のマクロを使えばいいじゃない….(お高いけどすごいよ)

ところでダブリングの話

TwitterXを徘徊していたところ、「初音ミクが2人いるように歌っているように聞かせるにはどうすれば良いんだ。同じ音源だからピッタリ重なって2人に聞こえないぞ」といった初音ミクユーザーの疑問に出くわしました。これはダブリングという手法によって、複数人数で歌っている感じを作り出すことができます。

図6がダブリング状態にある2つの声(有声音)のピッチを表していて、1人目が緑、2人目がオレンジとでも思ってください。
(黒い線の枠はノートを表しています)
2人の声質を編集するよりも、"交わらないピッチ"をまず書いてみましょう。コツは発音し始め(左側)を大きく乖離させ、それが徐々にまとまっていくイメージで書くことです。

図6

人数感は発音し始めを大きく大袈裟に動かすことで出すことができます。拙作ですが、作例を載せておきます。ダブリングの位置を手っ取り早く聴きたい人は1:30あたりをどうぞ。

逆に二つの声のピッチが付かず離れずのあまり大袈裟にズレないように作ってあげると、一人の声なのに厚みがある状態を作ることもできます。この場合は片方の声のボリュームを絞ると良いでしょう。
Vocal Thickening というワードで検索すると、声を"太くする""存在感を増す"方法についていくつか解説が出てくるかと思いますが、その中の一つの手法としてこのダブリングが有用な為、紹介しているサイトや動画も見つかるでしょう。

おわりに

ざっと解説してみましたが、音がないと分かりにくいかと思います。音の資料が欲しいと思った方、この記事が役に立ったと思った方は是非投げ銭をお願いします。筆者に加筆修正のプレッシャーを与えることができます。

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