言葉には流行がある
言葉には流行がある。
同じ流行語でも、理由があって流行する語と、よく使われるようになった理由が定かではない語がある。
年末の流行語大賞は、通信教育講座の会社がやっているうちに権威があるようなことになったが、最近は言葉の話ではなく、一年の出来事を振り返って、それに言葉をあてはめているだけになっている場合がほとんどであるのは周知の通り。
万人が認めるような流行語というのは、そうそう出現しないのだろう。
最近、出来事絡みではない流行語で、理由はわからないが、なぜかよく使われている語と感じている語が3つある。
「ワクワクする」
「紐解く」
「多々ある」
この3つ、ここ数年、耳につく。
もちろん、3つとも新しく生み出された言葉ではない。また、書き言葉としては、おそらくそれほど多用されていないのではないかと思う。SNSは別として。
この3語の「流行」はいつ始まったのだろう。
統計をとっているわけではないが、ここ5年くらいではなかろうか。
最初は3年くらいかと思ったが、こういう感覚は思ったよりも以前からである場合が多い。経験的に。
「ワクワクする」は、かつてであれば、「おもしろそう」「楽しそう」「楽しめそう」などと言っただろうと思う。「ドキドキ」とは少し違うんだろうけど、期待に胸を膨らませている感じが直接伝わるということで好まれているのだろう。
名をなした老学者がこの語を用いるのを聞いたときにはちょっと驚いた。
いずれにしても、「流行」の理由は推測できても、なぜ今なのかがわからない。
「紐解く」は以前に使われていた文脈よりも、用例は広くなっている。
本来は「書物を開く」という意味のはずだが、「ちょっとまとまった資料を調べて説明する」というような意味で用いられている。
誤用とは言えないだろうとは思うが、「説明、ちょっと長くなるかもしれません」といったニュアンスか。
ちょっと調べたら、産経新聞の校閲コラムが話題にしていた。
こじつければ、「ワクワク」も「紐解く」も、なんとなく、聞き手の期待感と関係しているか。
「多々ある」の最近の用法については、少し疑問がある。
以前は「あまりあってほしくないことが起こってしまうことが多い」というようなニュアンスが強かったように思うのだが、使用頻度が増えたことで、ほとんど「よくある」と同じ意味で用いられているように思う。
「よくある」よりも真面目度が高く、気楽さに乏しいと言えないこともないか。
こういう耳につく言葉が不思議なのは、多くの人がよく使っていると急に感じるようになるのと同じように、知らない間に、ほとんど使われなくなるということだ。
それがなぜなのかも、やはりはっきりとはわからない。
まあ、陳腐に感じる人が多くなっていくからということは言えるのだろうと思います。
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