ユダヤ・キリスト教の終末思想と黙示文学

ユダヤ・キリスト教における終末思想と黙示文学についてどのようにまとめることができるのかが最近の関心のひとつである。

他にも片付けなければいけないことがあるので、そう思いながら遅々としてこの話題の話が進んでいかないのはありがちなことだが、当座この関心から読んでおくべき日本語文献は2冊ある。

大貫隆『終末論の系譜ー初期ユダヤ教からグノーシス主義まで』筑摩書房、2019年 
上村静『終末の起源ー二つの系譜 創造論と終末論』ぷねうま舎、2021年 

この2冊とそこで参照されている文献からめぼしいものをひと通り目を通しておけば大きく外れることはないだろう。著者の二人は師弟関係にある。厳密には荒井献を師とする兄弟弟子というべきなのだろうか。

本来であれば、別系統の学者による議論を入れるべきところだが、日本語でとなれば、自ずと限界がある。

かといって、この分野について、ディープな外国語の文献に手を出すと大変なことになりそうなので、慎重にならざるを得ない。

比較的新しいもので、関連する翻訳書としては

J・J・コリンズ『「死海文書」物語ーどのように発見され、読まれてきたか』山吉智久訳、教文館、2020年 

この本の原著は2013年。同じ著者には『死海の巻物における黙示思想』(邦訳なし)という本がある。これは1997年刊。

John J. Collins
Apocalypticism in the Dead Sea Scrolls, Routledge: London, 1997

ここでの関心からすれば、こちらを訳してほしいところ。

もう一冊、手頃なところでは

James C. VanderKam, An Introduction to Early Judaism, Wm. B. Eerdmans Publishing: Grand Rapids, 2001, 2022

それぞれにこの領域のディープな研究が参考文献として挙げられているので、それを入り口にすればよい。

終末論と黙示思想はキリスト教信仰からすれば、非常に大きな問題のはずなのだが、その起源について(特に日本の)キリスト教学は放置してきた感がある。イエスの思想に先駆があることをあまり大きく示すと、キリスト教のオリジナリティが損なわれるという意識が働いている・・・というより、分野に従事する人が少なすぎるということなのだろうと思う。日本だけの問題ではないが、日本では特に厳しいかもしれない。

ユダヤ・キリスト教の終末論と黙示思想について、事典的な知識からもう少し踏み込んだ話が広まってほしいと思っている。


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