【抜粋】思想史研究の叙述法
坂本達哉著『社会思想の歴史 マキアヴェリからロールズまで』
1 『時代』の文脈
各章の主要な思想家たちが生きた時代の背景を、政治と経済の両面から概観し、思想家たちの思想形成に重要な意味をもつ基本的な諸事実を、読者とともに確認する
2 『思想』の文脈
『時代』の文脈と絡み合いながら展開した、思想史的な出来事の系譜や影響関係を整理し、同時代の諸思想の基本的な考え方や概念。理論の内容を確認する。
3 思想家たちの「問題」
「時代」と「思想」という二つの文脈の重層的な影響を受けながら、各章の主要な思想家たちが、いかなる問題を自らの思想課題として設定したのかを検討する。これをつうじて、思想家の内面にそくして、彼らがそれぞれの思想的出発点において、何をどう問題としたのかを明らかにする。
4 「問題」の展開
思想家たちの「問題」が具体的にいかなる形で展開したのか、その内容を概観する。各思想家の主要な学説や理論の解説をできるだけ多くの原典からの引用を行い、思想家たちの「肉声」を伝えることにより、読者自身の解釈や思考をめぐらす助力をする。
5 思想家たちの評価
思想家たちの思考の軌跡を概観・整理し、筆者なりの視点や現代的な問題意識も含めて、思想家たちの歴史的な役割や貢献を評価する。この際に、現代の学説・思想の視点から、過去の思想家たちを超越的に評価したり批判したりしないことに留意する。過去の古典的なテクストへの歴史文脈的な内在と、現代的関心からの思い切った再評価との、バランスをめざす。
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