税務調査で重加算税と言われたら・・・
税務調査で指摘される誤りや漏れは、会社・事業者によって多種多様なのですが、共通する問題点があります。
それが「重加算税」です。
目次
■. 重加算税とは
■. 重加算税を課される要件
■. 調査官の言葉に騙されない
■重加算税とは
重加算税とは、通称「ジューカ」と呼ばれており、払うべき税金が35%も上乗せされ、さらに延滞税(税金の利息部分)が高くなるという、
まさにダブルパンチです。
国税庁の発表によると、法人が税務調査で重加算税が課される割合は約20%にもなります。
つまり、5件の税務調査が行われると1件に重加算税が課されているのというのが現実なのです。
本当に恐ろしいことです。
もちろん本当に「脱税」など悪いことをしていれば、重加算税を課せられて当然なのですが、税務調査の現場では、そんな悪いことの認識がなくても、「重加算税だ」と調査官から指摘されるケースも多々あるので、細心の注意が必要なのです。
■重加算税を課される要件
では、重加算税を課される要件というのは、どういったものなのでしょうか。
重加算税が課される要件は、法律で明記されています。
簡単にいうと、「隠ぺいまたは仮装」したことです。
逆にいうと、「隠ぺいまたは仮装」をしていなければ、重加算税は課されないということです。
まず、「隠ぺいまたは仮装」という言葉の意味合いを考えてみてください。
「隠ぺいまたは仮装」という言葉を考えてみると、「故意・わざと」という意味合いを含んでいます。
「故意ではない隠ぺい」も「わざとじゃない仮装」もありえないですよね。
「うっかり隠ぺいしました」
「ミスして仮装しました」
こういう言葉は日本語として成立していないことは誰でもわかります。
ですから、税務調査において重加算税と指摘された場合に、反論したければまず、「故意・わざと」やっていないこと、見解の相違であることを主張することなのです。
「隠ぺいまたは仮装」とは漠然とした言葉ですが、これを裁判所はこのように定義しています。
「「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲すること」
(和歌山地裁昭52・6.23判決)
裁判所も、「わざと」何かを隠すことを「隠ぺい」で、「わざと」何かを書き変えたりすることを「仮装」と定義しているのです。
悪いことをした会社が、重加算税を課されるのだということが、漠然とでもおわかりいただけると思います。
「隠ぺいまたは仮装」を例示すると、このような行為を指すことになります。(あくまでも「例示」であることをお忘れなく)
(1) 隠ぺい
①二重帳簿の作成:税務署や税理士に見せる帳簿と、本当の帳簿を分けて作っていた場合
②売上除外:売上をわざと少なくしていた場合
③架空仕入:実際には存在しない仕入を帳簿上あったようにしていた場合
④架空経費:実際には存在しない経費を帳簿上あったようにしていた場合
⑤棚卸資産の除外:在庫がある会社で、決算時の棚卸を実際により少なくしていた場合
⑥雑収入の除外:会社が得るべき副収入をわざと申告しなかった場合
(2) 仮装
①取引上の架空名義の使用:存在しない取引先名を使っていた場合
②通謀虚偽表示:取引先と共謀して、実際には存在しない取引をあるようにみせかける、または金額を変えたような場合
③虚偽答弁:調査官の質問に対して嘘の回答をした場合
これらはあくまでも、「こんな悪いことをしていたら重加算税が課されますよ」という例示に過ぎませんが、重加算税が課される要件はおわかりいただけたのではないでしょうか。
■調査官の言葉に騙されない
さて、ここで非常に重要なことは、あくまでも重加算税の要件は「隠ぺいまたは仮装」の行為をしたということです。
調査官がよく「これは不正だから重加算税ですね」という指摘は間違っています。
ただ「不正」をしたから重加算税になるのではなく、あくまでも上記のような「隠ぺいまたは仮装」行為をしたから重加算税になるのです。
また、よくありがちな指摘としては、単純な「誤り」を重加算税だと言われることもありますが、これも重加算税ではありません。
例えば、接待交際費をクレジットカードで支払い、クレジットカードの明細書で経費処理したにもかかわらず、店からもらった領収書でも経費処理した場合、これは経費の2重計上となり、調査官は「重加算税ですね」と言ってきます。
しかし、「わざと」経費の2重計上をしたのではなく、ただ単純に誤って経費処理しただけですから、重加算税にはならないのです。
調査官の言い分を鵜呑みにせず、「故意・わざと」なのか、重加算税の法的要件を満たしているかどうかできちんと判断してください。
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