好酸球性食道炎:第一選択は・・・支払い側にとって都合が良いじゃダメでは?
医療保険支払側にとっては薬使われないのがそりゃ都合が良いだろう。PPIが患者側にとっては費用対効果比が良い。
でも、PPIじゃ症状軽減できない場合が問題。
日本とコストも違うので、我が国の参考になるかどうかは?
Hiramoto, Brent, Mayssan Muftah, Ryan Flanagan, Eric D. ShahとWalter W. Chan. 「Cost-Effectiveness Analysis of Current Treatment Options for Eosinophilic Esophagitis」. American Journal of Gastroenterology, 2024年9月30日. https://doi.org/10.14309/ajg.0000000000003104.
序論:
好酸球性食道炎の管理戦略には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、経口局所ステロイド(tCS)、除去食、ならびに生物学的製剤であるデュピルマブが含まれるが、初期治療の選択に関する明確な指針は依然として不足している。本研究では、これらの初期治療法を比較する費用対効果分析を実施した。
方法:
支払者視点に基づき、好酸球性食道炎の初期治療法であるPPI、tCS、6食品除去食(SFED)の費用対効果を評価するためにマルコフモデルを構築した。一次および二次治療無効の場合の治療変更を考慮に入れた。主要なアウトカムは、2年および5年のタイムホライゾンにおける増分費用効果比である。二次分析として、患者特有のコストも考慮した社会的視点からのモデル、およびデュピルマブをtCSおよびPPIと比較する簡略化モデルも実施した。
結果:
基本ケースシナリオ(5年のタイムホライゾン)において、平均コストはSFEDが$15,296.81、PPIが$16,153.77、tCSが$20,975.33であり、SFEDが最も効果的かつ低コストな戦略であった。一方、2年のタイムホライゾンではPPIが最も低コストであった。社会的視点からは、PPIが2年および5年のタイムホライゾンで支配的な初期戦略であった。薬物治療の中では、PPIが最も費用対効果の高い初期選択肢であった。デュピルマブはtCSと比較して費用対効果が低く、四半期ごとのコストを$7,311から$2,038.50に削減する場合にのみ、許容的なモデル条件下で費用対効果が認められた。
考察:
支払者視点では、SFEDが最も効果的で費用対効果の高い初期治療法であり、社会的視点ではPPIがより費用対効果に優れている。また、薬物治療の中ではPPIが最も費用対効果の高い戦略であった。デュピルマブが初期治療として費用対効果を持つには、コストの大幅な削減が必要である。
**6食品除去食(Six-Food Elimination Diet, SFED)**は、好酸球性食道炎(EoE)の治療法の一つで、症状を引き起こす可能性が高い6つの食品グループを一時的に完全に除去する食事療法である。この方法は、食物アレルギーや過敏反応がEoEに関与する場合に有効とされている。
除去する食品グループ
以下の6つの食品グループを対象とする:
乳製品(牛乳や乳製品全般)
小麦(グルテンを含む食品)
卵
大豆
ナッツ類(ピーナッツや木の実)
魚介類(魚や甲殻類など)
実施方法
初期除去
上記の6つの食品をすべて除去した食事を一定期間(通常6~8週間)続ける。再導入(食物挑戦試験)
除去期間後、1つずつ食品を再導入し、症状や内視鏡所見(食道粘膜の炎症や好酸球浸潤の改善状況)を評価する。症状が再発した食品を特定し、その食品を長期的に除去する。継続管理
トリガーとなる食品が判明したら、それを除去する食事を維持する。
SFEDの目的
SFEDの目的は、好酸球性炎症を引き起こす食品を特定し、EoEによる症状をコントロールすることである。この方法は薬物治療を避けたい患者や、食事がEoEの原因と考えられる場合に適している。
長所と短所
長所
薬剤を使用せずに症状を改善できる可能性がある。
原因となる食品を特定できれば、長期的な管理が容易になる。
短所
除去食の実施が困難である場合がある(食事制限によるストレスや栄養不足のリスク)。
食物挑戦試験が煩雑で時間がかかる。
SFEDは特に小児や若年層の患者でよく用いられるが、医師や栄養士の指導のもとで実施することが推奨される。