DHAは、NASHにおけるBTC-EGFR経路を抑制し、肝細胞癌への進行を予防

betacellulin (BTC)の関与が明らかになった


Padiadpu, Jyothi, Manuel Garcia‐Jaramillo, Nolan K Newman, Jacob W Pederson, Richard Rodrigues, Zhipeng Li, Sehajvir Singh, ほか. 「Multi‐omic network analysis identified betacellulin as a novel target of omega‐3 fatty acid attenuation of western diet‐induced nonalcoholic steatohepatitis」. EMBO Molecular Medicine 15, no. 11 (2023年10月20日). https://doi.org/10.15252/emmm.202318367 .


臨床研究および前臨床研究により、ω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)を食事に補充することで、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の肝機能障害を軽減できることが明らかになったが、この作用の分子的基盤は不明であった。ここで我々は、西洋食誘導性NASHの前臨床モデルマウスにおいて、ω3 PUFAの効果に関与する重要な分子経路を明らかにするために、マルチオミックネットワーク解析を用いた。また、NASHは肝癌の前駆症状であることから、ヒト肝癌のトランスクリプトームのメタ解析を行い、肝癌で発現が上昇し、ω3 PUFAによって発現が低下する主要なEGFR結合タンパク質として、betacellulin (BTC)をNASHの動物およびヒトで明らかにした。そして、betacellulin (BTC)は静止肝星細胞の増殖を促進し、トランスフォーミング増殖因子-β2を誘導し、コラーゲン産生を増加させることによって作用することを確認した。TLR2/4アゴニストと併用すると、betacellulin (BTC)はマクロファージ中のインテグリンを上昇させ、炎症と線維化を促進した。以上の結果から、betacellulin (BTC)の抑制は、NASHに対するω3 PUFAの抗炎症・抗線維化作用に関連する重要なメカニズムの一つであることが示唆された。


  • 本研究では、ネットワーク・モデリングと実験的検証を含むシステム・アプローチを採用し、NASHと肝臓癌の両方におけるω3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の新たな作用機序を明らかにした。その結果、PUFAはベタセリンを阻害し、それによって肝線維化と炎症を減少させることが示された。

  • NASHのマルチオミックネットワークと肝癌のメタアナリシスは、ω3 PUFA、特にドコサヘキサエン酸(DHA)によって抑制される重要な因子として、上皮成長因子ファミリーのメンバーであるbetacellulin (BTC)を指摘した。

  • BTCは肝星状細胞におけるコラーゲン産生、TGFB2発現を誘導し、TLR2/4アゴニストと結合してマクロファージにおけるインテグリン発現を刺激する。

  • DHAは、NASHにおけるBTC-EGFR経路を抑制し、肝細胞癌への進行を予防する可能性がある。

  • ミトコンドリアのカルジオリピン前駆体は、ω3 PUFAによるミトコンドリア機能改善における重要な脂質の候補である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?