変形性関節症：tribosystem上、滑液中の低分子ヒアルロン酸がHA-脂質複合体吸着を妨害：高分子HAと逆の働き

Makisey

変形性関節症の関節内の低分子量ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸-脂質複合体の吸着を妨げることを示し、表面にアモルファスフィルムが形成されないことは、このフィルムが摩擦と摩耗を減らすのに役立つはずで、変形性関節症の結果を反映している可能性があると解説

滑液の関節液は、2つの関節の骨の間にある滑膜関節の空洞に存在し、滑膜関節を形成する骨の表面は、軟骨の層で覆われ、関節内の滑液は、動作中の軟骨同士の摩擦を軽減し、可動性を緩和する働きがあり、ヒアルロン酸、リン脂質、ルブリシンからなる粘性のある液体からなる。ヒアルロン酸は多糖類（複合糖質）、リン脂質は脂肪酸で構成され、細胞膜に存在する。リン脂質は、自ら配列して二重膜（2層の脂質からなる）や小胞（脂質膜に囲まれた液体を含む球状の構造物）を形成する。このプロセスは、脂質分子の疎水性と親水性によって導かれる。　それに加えて、リン脂質はヒアルロン酸と相互作用し、その潤滑特性に影響を与える可能性がある。滑液中のヒアルロン酸が関節の骨表面間の潤滑剤として果たす役割に関する研究では、相反する結果が得られている。
ヒアルロン酸の濃度と分子量がリン脂質と複合体を形成しうるかどうかに焦点を当てた。その結果、ヒアルロン酸が分解されると分子量が低下することがわかり、まさに変形性関節症で起こることがわかった。その結果、関節軟骨の摩擦や摩耗が増加すると、Medical News Todayは報じている(Changes In Composition Of Joint Lubricant Causes Osteoarthritis, Study Says (medicaldaily.com)。


Sun, Kangdi, Tooba Shoaib, Mark W. Rutland, Joseph Beller, Changwoo Do, and Rosa M. Espinosa-Marzal. “Insight into the Assembly of Lipid-Hyaluronan Complexes in Osteoarthritic Conditions.” Biointerphases 18, no. 2 (March 2023): 021005. https://doi.org/10.1116/6.0002502.

滑液中の分子と軟骨表面の相互作用は、軟骨境界潤滑の低摩擦化に寄与する吸着膜の形成に重要な役割を果たすと考えられる。変形性関節症（OA）は最も一般的な退行性関節疾患である。これまでの研究で、変形性関節症に罹患した関節では、ヒアルロン酸（HA）が分解して分子量が大幅に低下するだけでなく、その濃度も10分の1に低下していることが明らかになっています。ここでは、健康な関節と病気の関節に存在する生理的な条件をシミュレートするために、HA濃度と分子量の関数として脂質-HA複合体の構造変化を調査しました。小角中性子散乱と動的光散乱(Small angle neutron scattering and dynamic light scattering)を用いてバルク溶液中のHA-脂質ベシクル(HA-lipid vesicles)の構造を決定し、原子間力顕微鏡と水晶振動子マイクロバランスの組み合わせ(a combination of atomic force microscopy and quartz crystal microbalance)でgold surfaceへの集合を研究した。MWとHA濃度の両方が、バルク中のHA-脂質複合体およびgold surface上での集合体の構造に大きな影響を与えることを推察した。このことは、境界層の機械的完全性と寿命に悪影響を及ぼすと予想され、OA関節で報告されている軟骨の摩耗の増加の一因となる可能性がある。

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序文箇条書き要約(Chat-GPT4)

自然界には摩擦を最小限に抑える美しいトリボシステムが存在し、その一例が関節軟骨。

  1. 関節軟骨の修復能力は限られており、関節の健康にとって保存が重要。

  2. 関節炎の一種である骨関節炎は、多くの人々に影響を与え、高齢者に特に多い。

  3. 関節液の成分分析は、関節病の診断に役立ち、関節炎の診断に活発な研究が行われている。

  4. リン脂質とヒアルロン酸の相互作用が関節摩擦を最小限に抑える役割を果たしていることが研究されている。

  5. ヒアルロン酸の分子量や濃度が、リン脂質との相互作用に影響を与えることが示唆されている。

  6. 骨関節炎の進行に伴って、関節液中のヒアルロン酸の組成が大きく変化する。

  7. 本研究では、健康な関節と病気の関節の条件を模倣し、リン脂質とヒアルロン酸の構造変化を調査している。

トリボシステムは英語で "tribosystem" と言います。これは、摩擦（friction）、摩耗（wear）および潤滑（lubrication）の現象が相互に関連し合って機能するシステムを指します。


DLSで測定した脂質-HA混合物のサイズ（半径）を、A, 低MW HAとB, 高MW HAのHA濃度の関数として示した。
DPPC濃度は0.2mg/mlに固定した。どちらの系もマルチモーダルなサイズ分布を示す。プロットは気泡図で、各ピークの平均半径を示し、エラーバーは標準偏差を示し、気泡の大きさは各ピークの相対強度を表している。どちらのHA-脂質混合物も1つの顕著なピーク（青字で、低MW HAはピーク2、高MW HAはピーク3）を示している。ラベルは最も顕著なピークの多分散性指数を示している。ピーク1は測定のアーチファクトであると思われる。1000 kDaのポリマーは約8 nmの回転半径を持つと思われ（Ref. 39）、それゆえBのピーク2（赤）は、自由なHA鎖の集合を示唆している。1組成につき10回の測定が行われ、気泡図はこれら10回の測定の平均値を示している。緑色のバブルは非常に小さいため見ることができない。
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Discussion要約

低分子量HAは、純粋なDPPC小胞よりも大きいHA-リポソームのサイズに顕著な影響を与える。

  • HAの分子量が増えると、小胞サイズや二重層厚さが減少し、高分子量HAは二重層内に収容されないことが示唆される。

  • 低分子量HAがリポソームとより強く相互作用することが、以前の研究と一致している。

  • 高分子量HA-DPPC膜の形成は、高い粗さと消散を示すため、滑らかで非粘着性の膜が生成される。

  • 高分子量HAの濃度が増加すると、膜厚が減少し、形態が変化する。

  • 高分子量HAが適度な濃度で存在すると、滑らかで非粘着性の膜が生成され、関節の摩擦低減に役立つと考えられる。

  • 低分子量HAは、生物学的界面において小胞の吸着を妨げることが示されている。

  • 低分子量HAは、DPPC二重層に吸着または挿入され、親油性接触を最大化することで、小胞サイズと二重層厚さに影響を与える。

  • HAとDPPC膜との相互作用は、HA分子の形態や親油性および水素結合部位の数に依存する。

  • 高分子量HAは、二重層内に収容されず、二重層表面に集まることが示唆されている。

  • 高分子量HAの濃度が増加すると、HAとDPPCの相互作用の確率が増加し、小胞サイズが減少する可能性がある。

  • 低分子量HAと高分子量HAの組み合わせが存在する場合、競合吸着が起こり、低分子量HAが境界層の形成を損なう可能性がある。

  • HA自体およびHA-リポソーム複合体の研究は、軟骨の関節表面に高い潤滑性を提供するHAの役割を完全には裏付けていない。

  • 低分子量HAに関する結果は、MDシミュレーションと中性子反射測定を組み合わせた研究が、HAとDPPC小胞との複雑な相互作用および摩擦と摩耗との関連性に関する洞察を提供できることを示唆している。

低分子ヒアルロン酸と高分子ヒアルロン酸の生成過程の違いは？（Chat-GPTに聞いた）

What is the difference in the formation process of low molecular weight hyaluronic acid and high molecular weight hyaluronic acid?

Hyaluronic acid (HA) is a naturally occurring glycosaminoglycan polymer that is present in many connective tissues throughout the body, including the skin, cartilage, and synovial fluid. It is composed of repeating disaccharide units of glucuronic acid and N-acetylglucosamine.
The formation process of HA can result in both low and high molecular weight (MW) forms of the molecule. Low MW HA typically has a molecular weight of less than 500 kDa, while high MW HA can have a molecular weight of up to 10,000 kDa.
The primary difference in the formation process of low and high MW HA is the length of the polymer chains. During synthesis, the HA chain length is regulated by the activity of the HA synthase enzymes. Low MW HA is typically produced by HA synthases that are less processive, meaning they generate shorter chains of HA. In contrast, high MW HA is produced by HA synthases that are more processive and generate longer chains of HA.
Furthermore, low MW HA can also be generated by the degradation of high MW HA. This can occur through several mechanisms, including enzymatic degradation by hyaluronidases or oxidative degradation.
In summary, the formation process of low and high MW HA primarily differs in the length of the polymer chains produced, with low MW HA being generated by less processive HA synthases or by degradation of high MW HA.

これが本当なら、常に、high MW HAの供給が必要なはずだが？どのようにしたら良いのだろうか？

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