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大麻喫煙歴:エピジェネティック年齢の加速と関連

依存症による累積効果も記述されている。

Hernandez Cordero, Ana I., Xuan Li, Chen Xi Yang, Amirtha Ambalavanan, Julie L. MacIsaac, Michael S. Kobor, Dany Doiron, ほか. 「Cannabis Smoking Is Associated with Advanced Epigenetic Age」. European Respiratory Journal 63, no. 5 (2024年5月): 2400458. https://doi.org/10.1183/13993003.00458-2024 .

以下、論文要旨の日本語訳になります。 Bard要約使用

要旨

  • 大麻の使用は、長年規制物質に指定されるなど議論の的となってきた。ある研究では、大麻喫煙は呼吸器系の症状の増加や高齢者の肺機能の低下などの有害な影響と関連があると指摘されているが、他の研究ではこれらの知見を完全に再現できていない。

  • 大麻と疾患発症との関連性は、DNAメチル化(メチル基の付加/除去による遺伝子発現の制御)の観点から調査することが有効かもしれない。メチル化の変化は時間の経過とともに蓄積され、年齢と強く関連するパターンを示すことから、生物学的年齢を推定するエピジェネティッククロックの開発につながっている。

  • 本研究では、カナダ閉塞性肺疾患コホート(CanCOLD)の参加者(n=93)におけるエピジェネティック年齢と大麻喫煙の関係を調べた。大麻喫煙歴の評価は、以前報告されている手法に沿って行われた。ベースライン時に血液サンプルを採取し、DNAメチル化を解析した。

  • エピジェネティック年齢はthe Clock Foundation tool を用いて算出し、大麻喫煙の有無(非喫煙者、元喫煙者、現在喫煙者)別に解析を行った。解析では、年齢、性別、BMI、バッチ、喫煙歴、血球分画などの交絡因子を調整した。

  • 解析の結果、現在の大麻喫煙は特定のエピジェネティッククロックによる年齢加速と関連しており、喫煙を中止することで年齢加速が正常化することが示唆された。この関連性は、肺機能への影響や大麻喫煙歴を調整後も維持された。大麻喫煙歴はエピジェネティック年齢加速と相関していた。

  • これらの知見は、現在の大麻喫煙と累積的な大麻喫煙歴がエピジェネティック年齢の加速と関連していること、そして禁煙によってこれら年齢加速の一部が正常化される可能性を示しています。

研究の限界

  • サンプルサイズが小さいため、大麻喫煙者全体を反映できていない可能性がある。

  • 併用薬物やアルコールの使用が年齢加速に寄与している可能性がある。

  • 大麻喫煙の中止前後のエピジェネティック年齢の縦断的な評価は行っていないため、知見は相関関係にとどまっている。


解説 Bard

Clock Foundation toolとは?

Clock Foundation toolは、エピジェネティッククロックと呼ばれるツールです。エピジェネティッククロックとは、DNAメチル化パターンに基づいて生物学的年齢を推定するものです。

DNAメチル化とは、DNAの塩基の一つであるシトシンにメチル基を付加または除去する化学修飾です。この修飾は、遺伝子発現を制御する役割を果たします。DNAメチル化パターンは、時間の経過とともに変化することが分かっています。そして、この変化は、年齢と強く関連することが示されています。

Clock Foundation toolは、このDNAメチル化パターンの変化を利用して、生物学的年齢を推定します。具体的には、以下の5つのエピジェネティッククロックを提供しています。

  • DNAmAge:最も基本的なエピジェネティッククロックであり、年齢と最も強く関連しています。

  • DNAmSkinBlood:皮膚細胞と血液細胞のDNAメチル化パターンに基づいて推定される年齢です。

  • DNAmAgeHannum:Hannum et al. (2013)によって開発されたエピジェネティッククロックです。DNAmAgeよりも精度が高いとされています。

  • DNAmGrimAge:死亡リスクと関連していることが示されているエピジェネティッククロックです。

  • DNAmPhenoAge:臨床バイオマーカーと年齢に基づいて推定される年齢です。

Clock Foundation toolは、以下の目的で使用することができます。

  • 加齢研究:加齢メカニズムの解明や、抗加齢治療の開発などに役立てることができます。

  • 疾患研究:疾患の発症や進行とエピジェネティック年齢の関係を調べることができます。

  • 個人の健康管理:個人の生物学的年齢を推定することで、健康状態を評価したり、生活習慣の改善に役立てることができます。

Clock Foundation toolは、オープンソースで無料で利用することができます。以下のURLからダウンロードできます。

https://dnamage.clockfoundation.org/

Clock Foundation toolの利用方法

Clock Foundation toolの利用方法は、以下の通りです。

  1. DNAメチル化データを取得します。

  2. Clock Foundation toolのウェブサイトにアクセスします。

  3. 取得したDNAメチル化データをアップロードします。

  4. エピジェネティッククロックを選択します。

  5. 「計算」ボタンをクリックします。

計算結果は、以下の形式で表示されます。

  • 生物学的年齢

  • 各エピジェネティッククロックによる年齢加速

  • 年齢加速の信頼区間

Clock Foundation toolの注意点

Clock Foundation toolは、あくまでも生物学的年齢を推定するツールです。実際の年齢とは異なる場合があります。また、Clock Foundation toolは、研究目的で使用するためのツールであり、診断目的で使用することはできません。

Clock Foundation toolに関する情報

Clock Foundation toolに関する詳細は、以下のURLを参照してください。

https://dnamage.clockfoundation.org/

参考資料

  • Hannum, M. C., et al. (2013). Genome-wide methylation profiling of individuals reveals major age-related methylation patterns and biomolecular features. Genome research, 23(9), 1437-1441.

  • Horvath, S., et al. (2015). An epigenetic clock for measuring aging in humans and mice. Science, 348(6242), 371-375.

  • Levine, B. Z., et al. (2018). An epigenetic clock model for early-life stress exposure and cellular aging in human tissues. PLoS genetics, 14(10), e1007578.

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