心筋ferroptosis促進するAlox15/15-HpETEと阻害薬

けんきゅうしゃたちは、15-HpETEが働くと、心臓のさいぼうの中にある小さなエネルギー工場(ミトコンドリア)がうまく働かなくなりますので、これをAlox15という物質を止める薬(ML351)を使って、心臓のさいぼうのフェロプトーシスを抑えることができることを発見しました


Cai, Wenbin, Le Liu, Xuelian Shi, Yanan Liu, Jin Wang, Xuan Fang, Zhipeng Chen, Ding Ai, Yi Zhu, and Xu Zhang. “Alox15/15-HpETE Aggravates Myocardial Ischemia-Reperfusion Injury by Promoting Cardiomyocyte Ferroptosis.” Circulation, March 29, 2023, CIRCULATIONAHA.122.060257. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.122.060257.


【背景】 心筋虚血再灌流(I/R)傷害は、心筋細胞の減少や線維化など心機能障害を引き起こす。I/R損傷後の心機能を守るためには、細胞死を防ぐことが重要である。再灌流の過程では、壊死、アポトーシス、オートファジー、フェロプトーシスなど、複数のタイプの心筋細胞死が起こりうる。しかし、再灌流障害後に様々な細胞死が起こる時点や、心筋細胞におけるフェロプトーシス制御のメカニズムは未だ不明である。
【方法】 左前下行冠動脈結紮マウスモデルを用いて、再灌流障害後に様々な細胞死が起こる時点を明らかにすることを目指した。心筋細胞のフェロプトーシスに関与する主要な分子を発見するために、メタボロミクス研究を行った。心筋I/R損傷における15-リポキシゲナーゼ(Alox15)とペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γコアクチベーター1-α(Pgc1α)の役割を理解するために、機能喪失/獲得アプローチを用いた。
【結果】 I/R傷害の初期にはアポトーシスとネクローシスが起こり、長時間の再灌流時にはフェロプトーシスが細胞死の優勢な形態であることがわかった。エイコサノイドのメタボロームプロファイリングにより、Alox15代謝物がフェロプシス心筋細胞で蓄積していることが明らかになった。また、Alox15の発現が縫合部より下の左心室損傷部で特異的に増加し、心筋細胞と共局在していることを明らかにした。さらに、マウスの心筋特異的なAlox15ノックアウトにより、I/R傷害が緩和され、心機能が回復することがわかった。Alox15がアラキドン酸から誘導する中間代謝物である15-Hydroperoxyeicosatetraenoic acid(15-HpETE)は、心筋細胞のフェロプトーシスの引き金となることが明らかにされた。その作用機序を探ったところ、15-HpETEがPgc1αとユビキチンリガーゼであるリングフィンガープロテイン34の結合を促進し、ユビキチン依存的に分解することを発見した。その結果、ミトコンドリア生合成の減衰とミトコンドリアの形態異常が観察された。Alox15を特異的に阻害するML351は、Pgc1αのタンパク質レベルを上昇させ、心筋細胞のフェロプターシスを抑制し、傷ついた心筋を保護し、心機能を回復させた。
【結論】 我々は、Alox15/15-HpETEを介した心筋細胞フェロプトーシスが、長期のI/R傷害に重要な役割を果たすことを立証した。


Ferroptosisについて小学生でもわかるよう説明してください

Language: Japanese

Tone: Clinical

Writing Style: Academic

フェロプトーシス(ferroptosis)は、細胞が死ぬ一つの方法です。これは、鉄(アイアン)という金属が関与しています。細胞内で鉄が過剰に存在すると、細胞が傷ついたり、機能しなくなることがあります。このような状況が続くと、細胞はフェロプトーシスを起こし、最終的に死んでしまいます。
フェロプトーシスは、体内の鉄バランスを維持するために必要です。しかし、この現象が過剰に発生すると、様々な病気や障害につながることがあります。例えば、脳損傷やがん、神経疾患などに関係しています。したがって、フェロプトーシスを適切に制御することが、健康を維持するために重要です。

Ferroptosisについて大学基礎生物過程の学生にレクチャーしてください

フェロプトーシスは、鉄依存性の細胞死の形態であり、リン脂質過酸化を介した過程で発生します。この現象は、活性酸素種(ROS)の過剰生成と、細胞膜のリン脂質中の不飽和脂肪酸の酸化が密接に関与しています。細胞内の鉄濃度が増加すると、酸化ストレスが増大し、フェロプトーシスが引き起こされます。
フェロプトーシスの誘導には、主に2つの経路が関与しています。まず、グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)という酵素の機能喪失があります。GPX4は、細胞膜リン脂質の過酸化を防ぐ役割を果たし、フェロプトーシスを抑制します。GPX4の機能喪失により、細胞膜のリン脂質過酸化が促進され、フェロプトーシスが誘導されます。次に、システムXc-と呼ばれるアミノ酸輸送体の不活性化が関与しています。システムXc-は、酸化ストレスに対抗するのに重要な抗酸化物質であるグルタチオンを細胞に供給する役割があります。システムXc-の不活性化により、細胞内のグルタチオン濃度が低下し、酸化ストレスが増加し、フェロプトーシスが引き起こされます。
フェロプトーシスは、正常な生理プロセスにおいて細胞の生存と死のバランスを維持する役割がありますが、異常な状況下でのフェロプトーシスの誘導は、神経変性疾患、がん、虚血性脳損傷などの病態に関与しているとされています。フェロプトーシスの分子メカニズムを解明し、それを利用した治療戦略の開発が、現在の生物学および医学研究の重要な課題となっています。


Alox15 expressionとの関連はあるのですか?

はい、Alox15(アラキドン酸15-リポキシゲナーゼ:15-lipoxygenase)遺伝子の発現とフェロプトーシスの関連が報告されています。Alox15は、脂質代謝酵素であるリポキシゲナーゼ(LOX)ファミリーの一員であり、リン脂質の過酸化を触媒します。
フェロプトーシスは、リン脂質過酸化が重要な役割を果たす現象であるため、Alox15の発現がフェロプトーシスの誘導に関与していると考えられます。実際に、いくつかの研究でAlox15の発現が増加すると、フェロプトーシスが誘導されることが示されています。また、Alox15を遺伝子ノックアウトした細胞や動物モデルでは、フェロプトーシスの抑制が観察されています。
このように、Alox15の発現とフェロプトーシスとの関連性が報告されており、Alox15がリン脂質過酸化を促進することで、フェロプトーシスの誘導に寄与しているとされています。ただし、フェロプトーシスは複雑な分子メカニズムによって制御されており、Alox15以外にも様々な因子が関与していることに注意が必要です。

”15-Hydroperoxyeicosatetraenoic acid (15-HpETE), an intermediate metabolite derived from arachidonic acid by Alox15, was identified as a trigger for cardiomyocyte ferroptosis. ”という一文を論文で見つけました。上記知見とともに解説してください

この論文で示されている知見は、Alox15によってアラキドン酸から生成される中間代謝産物である15-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(15-HpETE)が、心筋細胞のフェロプトーシスを誘導する引き金として特定されたことを報告しています。
Alox15は、前述の通り、アラキドン酸を酸化し、15-HpETEを生成するリポキシゲナーゼ(LOX)ファミリーの酵素です。この研究によれば、15-HpETEが心筋細胞においてフェロプトーシスを誘導する役割を担っています。これは、15-HpETEがリン脂質過酸化を促進し、細胞膜の損傷を引き起こすことによって、フェロプトーシスが誘発されると考えられます。
この知見は、Alox15とフェロプトーシスとの関連性についてさらに具体的なメカニズムを明らかにしています。それは、Alox15によって生成される中間代謝産物である15-HpETEが、心筋細胞においてフェロプトーシスを誘導する重要な分子であることを示しています。
このような知見は、心筋細胞のフェロプトーシスに関連する病態(例えば、心筋梗塞や心不全)において、Alox15や15-HpETEを標的とした治療戦略を開発するための基礎となります。ただし、フェロプトーシスは複雑な分子メカニズムによって制御されているため、治療開発にあたっては、他の関与する因子や経路も考慮する必要があります。


上記論文の続きに”We explored the mechanism underlying its effects and found that 15-HpETE promoted the binding of Pgc1α to the ubiquitin ligase ring finger protein 34, leading to its ubiquitin-dependent degradation. Consequently, attenuated mitochondrial biogenesis and abnormal mitochondrial morphology were observed. ML351, a specific inhibitor of Alox15, increased the protein level of Pgc1α, inhibited cardiomyocyte ferroptosis, protected the injured myocardium, and caused cardiac function recovery.”とありますが、関連して説明してください。(めんどくさくなってきたのでザクッと質問)


この論文の続きでは、15-HpETEが心筋細胞のフェロプトーシスを誘導するメカニズムについて詳細に調査し、以下のような知見が得られています。
まず、15-HpETEは、PGC1α(遺伝子名:PPARGC1A)という転写共役因子とユビキチンリガーゼであるリングフィンガープロテイン34(RNF34)との結合を促進します。これにより、PGC1αがユビキチン依存的な分解を受けることが明らかにされました。その結果、ミトコンドリアの生合成が減少し、異常なミトコンドリア形態が観察されました。
著者らはまた、Alox15の特異的な阻害剤であるML351が、PGC1αのタンパク質レベルを増加させ、心筋細胞のフェロプトーシスを抑制することを示しました。さらに、ML351は損傷した心筋を保護し、心機能の回復を促進することが示されました。
これらの知見は、15-HpETEが心筋細胞のフェロプトーシスを誘導するメカニズムをさらに明らかにし、新たな治療戦略の開発につながる可能性があります。具体的には、Alox15阻害剤ML351が、フェロプトーシスを抑制し、心筋梗塞や心不全などの心臓疾患において心筋保護効果を発揮することが期待されます。ただし、臨床応用に向けては、さらなる研究や詳細な安全性評価が必要です。

小学生にわかるよう説明してください

フェロプトーシスは、細胞が死んでしまう現象で、鉄という元素が関与しています。この研究では、特定の物質(15-HpETE)が、心臓の細胞でフェロプトーシスを引き起こすことがわかりました。15-HpETEが働くと、心臓の細胞の中にある小さなエネルギー工場(ミトコンドリア)がうまく働かなくなります。
研究者たちは、Alox15という物質を止める薬(ML351)を使って、心臓の細胞のフェロプトーシスを抑えることができることを発見しました。この薬が心臓の細胞を守り、心臓の働きを改善することがわかりました。この研究は、心臓の病気を治すための新しい治療法の開発に役立つかもしれません。ただし、この薬を人に使う前に、もっとたくさんの研究が必要です。


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