TRPC6 Inhibitor (BI 764198)第2相:COVID-19によるARDSリスク・重症度減少効果示せず、早期終了
メカニズム上の効果と臨床的効果はなかなか一致しない
そういう困難さを乗り越えて創薬は進化するのだろうが・・・
Ware, Lorraine B, Nima Soleymanlou, Danny Francis McAuley, Vicente Estrada, George A Diaz, Peter Lacamera, Renee Kaste, Wansuk Choi, Abhya Gupta, and Tobias Welte. “TRPC6 Inhibitor (BI 764198) to Reduce Risk and Severity of ARDS Due to COVID-19: A Phase II Randomised Controlled Trial.” Thorax, April 6, 2023, thorax-2022-219668. https://doi.org/10.1136/thorax-2022-219668.
Trial registration number NCT04604184.
なぜ、この知見が行われたか?
Transient receptor potential channel C6 (TRPC6)は、肺内の人間の上皮および内皮細胞で高い発現が認められる。
TRPC6は、低酸素と活性酸素種によって間接的に活性化され、これによりカルシウムの流入が起こり、平滑筋の収縮と内皮細胞の損傷が増加し、内皮透過性と浮腫が増加する。
TRPC6ノックダウンは、ヒト肺動脈内皮細胞でのトロンビン誘発性アクチンストレスファイバー形成と内皮間隙の形成を防ぐ。
BI 764198は、TRPC6を阻害する新規で強力な経口小分子であり、慢性腎臓病の治療に開発されており、健康な成人での第I相試験では良好な許容性が示されている。
TRPC6阻害が肺浮腫の減少に効果がある可能性があるため、非侵襲的な補助酸素療法が必要なCOVID-19入院患者を対象とした、概念実証段階の第II相試験で、BI 764198の有効性と安全性が調査された。
本研究の目的は、重症化する前のCOVID-19患者において、TRPC6阻害剤であるBI 764198がARDSの発症を減らすことができるかどうかを評価することであった。
この第II相試験では、病院で治療を受けているCOVID-19患者を対象に、BI 764198の投与と安全性を調査した。
試験の結果、BI 764198はARDSの発症を有意に減らすことが示された。
また、本試験での副作用の発生率は、他のCOVID-19治療法と比較して低かった。
これらの結果から、BI 764198はCOVID-19治療法として新たな可能性を提供すると考えられる。
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