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経営の視点から:なぜ稽古やリハーサルにギャラが支払われないのか?

こんにちは。オリジナルミュージカル制作にゼロから挑むユッキーナです。今回の記事では、「経営の視点から:なぜ稽古やリハーサルにギャラが支払われないのか?」について、考えていきたいと思います。

この問題の一番の理由は、

・古くからの慣習である

この一言に、尽きると思います。え、そんなん知ってるし…!?ってなる方もいらっしゃいますよね。もう少し付け加えると、運営側が古くからの慣習に甘えているとも言えます。

では、なぜ古くからの慣習に甘えてしまうのでしょうか。ここからが本題です。

ミュージカルは超ハイリスク・ハイリターンビジネス

まず、そもそもミュージカルとは超ハイリスク・ハイリターンビジネスであることを知ってください。

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ヒットすれば、まさにアメリカンドリーム!

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しかし、そのレースに参戦できるか否かは、初期費用を工面できるか、否かできまります。

ここでポイントになるのが「初期費用」です。

初期費用(イニシャルコスト)とは、新しく事業を始めたり、新しく機械や設備などを導入したり、新しく建築物を建築したりするときなどに、稼働するまでの間に必要となる費用のことである。

そう「稼働するまでの間に必要となる費用」のことです。稼働するまで、ということは「利益が出ない期間にでていく費用」とも言えます。

稽古やリハーサルにギャラを払うということは、利益が出ない期間にでていく費用が増えるということです。

「利益の出ない期間にでていく費用」と「利益が出ている期間に見極めながら投資していく費用」、この二つの費用の重みは全く異なるということは想像がつきますね。

ここで少し復習です。ミュージカルは超ハイリスクハイリターンビジネスでした。それは、いくら費用を投資したとしても、利益が上がるかどうかはおろか、投資したコストを回収できるかすらわからないということを意味します。

もしその状況であなたが経営者であったら、どうしますか? 初期費用はできるだけ抑えたいと思うのではないでしょうか。

「いいや、それでも役者たちに稽古やリハーサルのギャラを支払うべきだ!」と、正義感のある人もいるかもしれません。

では、そこで役者たちに稽古やリハーサルのギャラをきちんと支払い、準備万全で本公演に臨んだとしましょう。

しかし、本公演にも運営費(ランニングコスト:本公演での役者のギャラ、音響・照明・舞台・演奏・劇場スタッフのギャラ、会場費、光熱費など)がかかります。この費用は、公演数が増えれば増えるほど、上乗せされます。

「それでも、この公演は大成功を収めるはずだ!!」

と、意気込んで本当にお客さんがジャンジャン入ったならばアメリカンドリームです。ですが、多くの場合は予想を下回る集客でしょう。

気がつけば、あなたは赤字まみれ。再起の費用もなくなるのです。結局役者たちにギャラを払えず、踏み倒すことになるかもしれません。

こんな悲劇をさけるために、よっぽどの余剰金がない限り、初期費用は抑えたいと思うのが経営者の常なのです。


運営側は役者を雇用していない

ここで古くからの慣習の話にもどります。

もし運営側と役者側にきちんとした雇用関係があれば、運営側は役者に働いた時間分の給与を払う義務があります。

ですが、残念なことに、役者のほとんどは「個人事業主」です。お金の流れは、運営側から役者に支払われていくので、雇用しているように感じられますが、本来は「対等なビジネスパートナー」なのです。

対等なビジネスパートナーなので、役者は「自分という商品を扱う会社の社長」であり、役者は社長が事前に対等に取り決めた契約のもとで働くことになります。

あなたは、資本提携関係のない「A社という会社が、B社という会社の社員の給与まで保証して支払っている」という話を聞いたことがありますか?

ないですよね。そういうことなのです。ちなみに、事務所に入るということは、事務所に社長(営業)代理を頼んでいるということです。なので、事務所が稽古のギャラを運営に請求してもいいのですが、古くからの慣習によって請求されることはありません(本公演の費用に練りこむかもしれないけど)。

ここでこのテーマの結論です。

Q.経営の視点から:なぜ稽古やリハーサルにギャラが支払われないのか?

A.初期費用をできるだけ抑えたい運営側からすると、役者を雇用しているわけではないので拘束時間に対しての給与の支払い義務はないし、この古くからの慣習はとっても都合がいいから

となります。

…それでいいのか!?


大企業には下請法という法律がある

上記した文章で、疑問を持った人がいると思います。「事前に対等に取り決めた契約のもとで」…現実は対等とは言えない!と。

通常のビジネスシーンには、下請法(下請代金支払遅延等防止法)という法律が存在します。これは大企業が小さな会社と仕事をやり取りする際、関係性や立場を利用した大企業の不当な要求から下請事業者を守る法律です。

たとえば、

・「要求に応じない場合はもう二度と取引をしない」と言われる、匂わされる

・「この製品の製造を受注する代わりに、こちらの製品の代金を無料してほしい」と言われる

・「これからも取引を続けたければ、この商品を購入するように」と言われる

などの事項が下請法に抵触します。


…ん?これって?

・「このギャラで応じない場合はもう二度と出演を依頼しない」と言われる、匂わされる

・「この公演に出演してもらうかわりに、稽古やリハの代金を無料してほしい」と言われる

・「これからもこの公演にでたければ、チケットノルマ分を支払うように」と言われる

…まぁ現実で、みなまで言われることはないかもしれませんが、なんか似ていますよね。

この法律がエンタメ業界にも適用されるかなどの下調べはできていないのですが、こういう法律が存在しているということは、社会一般的なビジネスルールとして、このご時世、稽古やリハーサルなどの拘束時間に対して、本公演の出演を理由にギャラを支払わないというのは、やはり普通ではないと思うのです。


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さて、いかがでしたでしょうか?

わたし自身、自己資金でのオリジナルミュージカルプロデュースを決意し、2020年6月に公演が決定しました。キャストも3人います。

この作品でも当然、稽古期間があります。

はじめから自己資金で十分に稽古やリハのギャラを支払うことは、経営リスクとして難しいのですが、お金を集めることはできるんじゃないかと考えています。

ご興味のある方は、「オリジナルミュージカル”人間ライブラリ”でのトライアル企画」をご覧いただきたいのですが、稽古運営のための協賛金を募り、集まったお金を稽古のギャラとして役者たちに分配していけたらと思っています。

追記:実際のトライアルの結果は以下の記事からご覧になれます!

また、オリジナルミュージカル「人間ライブラリ」の再演が2022年の12月に決定しました!本公演でも稽古協賛金をはじめとする企画を実施するべく準備を進めています。ぜひ、応援をお願いします!

詳しくは、Protopia公式サイトへ!



オリジナルミュージカルでみんなをハッピーに! 観劇者も、役者も、演出家も、脚本家も、音楽家も、スタッフも、みんながうれしいミュージカルのあたらしいビジネスモデルの実現に貢献します☆