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0458 - すばらしき世界

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映画『すばらしき世界』を鑑賞した。

オダギリジョー主演『ゆれる』を観て以降、著書『映画にまつわるXについて』シリーズも含めて、西川美和監督の感性に興味が尽きない。

セリフも演出も必要最低限で静かに描かれる日本映画が好みだが、今作はその極みのようで期待値を軽く超えてくれた。観終わってからしばらくは、軽い放心状態を味わった。

すばらしき世界

日本は暮らしやすい国だが、一度でも躓いたりはみ出したりした人が再起するには手厳しすぎる仕組みになっている。かと言ってレールを走り続けている人も幸せを感じにくいので、はみ出す人物や気に入らない他人を必要以上に攻撃する風潮が根強い。

かく言う自分も、1つの企業に正社員として数十年勤めるという経験が無く、そこそこ浮き沈みのある生き方をしてきたため「再起するには手厳しすぎる仕組みになっている」という部分については身に染みてくるものがある。しかもそれが自分ではない不可抗力によるものだったりもしたので尚更だ。

とはいえ、振り返ってみると、そんな状況を味わったからこそ気づけたことも多いし、その経験があったからこそ「現在の自分に活かされている指針」も沢山ある。

特に感じるのは「気にかけてくれる人の存在の有り難さ」だ。気にかけてくれる人、構ってくれる人、叱咤激励してくれる人など、すぐ近くで寄り添ってくれた「人」がいてくれたおかげで(大袈裟な言い方をすると)モヤモヤやイライラを爆発させることなく、道を外さずに済んだと思えることも正直なところ少なくない。ここまでは自分の話。

作品の途中で、とある人物の口から出た「やけど空が広い。不意にしたらあかんよ」という言葉がたまらない。どんなに理不尽な状況になろうとも、長い目で見て『勇気ある撤退』が必要になることもある。

ラストは、ただただ静かに涙するしかなかった。

未来が良ければ、辛い過去も肯定できる。

考えさせられることが多い、とてもすばらしき作品だった。観られて良かった。

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