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0238 - 雨の熊谷で見た高校生カップル

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雨の日が続いている。窓の外を見ると、それはそれは激しい雨。そんな激しい雨を眺めながら、ふと思い出したことがある。

かれこれ10年近く前のこと。その日はプチ遠征でライブするために埼玉県の熊谷に来ていた。

バンドメンバーと昼過ぎに車で熊谷へ到着。ライブハウスでサウンドチェック(リハーサル)を終えてから出演時間までは4〜5時間ほど空くため、メンバー全員で近所のお店で食事をした。

食事といいつつお酒も入って話も盛り上がり、気づけばあっという間に3時間以上が過ぎていた。そろそろライブハウスへ戻らねばとお店を出たところ、さっきまでの晴天はどこへやらな激しい雨と雷。

もちろん傘は無い。少し待てば通り過ぎて落ち着くだろうと、目の前に見えた、閉まっているお店の軒下へ駆け込んで様子を見ることに。

程なくして、同じく傘を持たずズブ濡れ状態な高校生カップルも軒下へ避難してきた。

雨の激しさもさることながら、雷が凄まじい。「ピカッ」ではなく「ビカ!」っと表すレベルで光ったと思いきや、すかさず「ズババババババーーーーン!」と突き刺す怒号。

横にいる高校生カップルの彼女が「恐いー!雷やだー!」と泣き出した。彼氏は、そんな彼女の背中をさすりながら「恐くないよー、大丈夫だよー」と声をかけている。

そんなカップルを嘲笑うかのように、雷はビカビカ光ってズバババーーーン!ズバババババーーーーン!と連呼する。彼女の泣き声も大きくなっていく。見ると涙で顔もクチャクチャだ。

背中をさすっていた彼氏の手が、彼女の肩に移動した。そして、グイッと自分に引き寄せて言ったセリフが

「大丈夫! 雷が落ちてきても、俺が守ってやるから!」

その時は「男前な彼氏だなー」と感心したのだが、今振り返って思うに、雷が落ちてきたとして、どうやって守るつもりだったのだろう。

今年も、もうすぐ梅雨を抜けて、本格的な夏が来る。

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