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オミクロン株のせいで、また日本とシンガポールの距離が遠くなってしまいました。


「ワクチン・トラベルレーン(VTL)」利用で海外との行き来を確実に増やして来たシンガポール。
一時は爆発的に増加した市中感染も、穏やかながら下降カーブを描き、
11月終わり頃から、やっと3桁台の日も多くなってきました。
さらには、11月29日からは最大5人までの飲食店利用も解禁になったというのに、突然悲しいお知らせが世界中を巡りました。

それは、南アフリカで確認された異変株の発生です。
WHOは南アフリカからの報告を受け、この株をオミクロンと命名。
デルタ株と同じ最大規模の警戒レベル「懸念される変異株(VOC)」に指定しました。

日本とのワクチン・トラベルレーンの締結を心待ちにしていた、シンガポール在住の日本人の方々や、日本のご家族にとっては今回の新株発見のニュースは、本当にショックな出来事でしょう。

*「ワクチン・トラベルレーン(VTL)」とは?
ワクチン2回接種完了から2週間以上が経過した人(完全ワクチン接種完了者)を対象にした、隔離なしでの入国を認める相互間による枠組みです。

やっぱり日本は、何か変と感じた出来事がおきました。

今回のオミクロン株発見で、かなり驚いたのは日本政府の動き。
岸田総理に代わったからなのか、ものすごく対応が早くなったようです。

迅速な対応は、国民にとって安心感が得られたかも知れません。

しかし、発表からわずか1日で取り消された国交省からの各航空会社への要請を知ったとき、多くの海外在住の日本人は、
どんな気持ちになったことでしょう。

この要請とは、12月1日に発表された「日本に到着する、すべての国際線の新規予約の停止要請」の事です。

この要請は、翌12月2日に撤回されました。

岸田文雄首相が、官邸で政府の対応を陳謝したそうですが、今回の出来事で日本と言う国が、いかに海外在住の日本人に冷たいという事が、露呈してしまったのではないでしょうか?

もし、この要請がそのまま取り下げられることがなかったら、……

11月30日時点で、日本帰国の航空券の予約をしていなかった日本人海外在住者は、どんなことが起きても、少なくとも1ヶ月間は日本へ戻れない事になっていたのです。
感染者が多い国だけではなく、コロナ感染者が0の国からも入国できなかったのです。

日本人は日本から出るな。
もし、出たら返ってくるなって事と理解しても良いのでしょうか?

これから、オミクロン株が発見されてからの日本政府とシンガポール政府の対応の違いを比べて見ようと思います。

コロナウィルスの異変株の発見

11月24日
南アフリカがコロナウィルスの異変株の存在を世界保健機関(WHO)に報告。WHOは同株を「懸念される変異株(VOC)」に指定。

この発表を受けて世界各国が動き出します。

シンガポール政府の動き

ここからは、オミクロン株発見の発表から、12月3日までのシンガポール政府の動きを見ていきます。

11月26日
11月28日(正式には27日の23:59分から)から、南アフリカをはじめその周辺国、合計7ヶ国からの外国人入国を禁止すると発表。

これらの国から入国する、シンガポール人および永住権保有者に関して、
10日間の隔離施設での隔離を新たに義務化。

詳細はシンガポール保健省のページからどうぞ(英文です)


11月30日
12月3日(正式には2日の23:59分から)から、全てのシンガポール入国者(隔離無しのワクチン接種者レーン(VTL)も含む)に、入国後3日目・7日目の検査(ART)を義務づけると発表。

また、12月6日から開始予定だった、中東3カ国からシンガポールへの隔離無し入国が延期。
対象国は、カタール、サウジアラビア、UAE。
延期理由は、この3国がオミクロン株流行国からの旅行者の乗り換え地点になっているため。

当日発表された詳しい情報は、シンガポール保健省のページからどうぞ。

https://www.reuters.com/article/idJPKBN2IF0L0?edition-redirect=ca


本当に複雑な、政府からの発表を、一覧表にして見やすくしてくれる、シンガポールのメディアに感謝です。

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Today より

12月2日
前日のヨハネスブルグからの便を利用して帰国した、
シンガポール国籍と永住権保持者2名の感染が確認される。
同乗者全ての検査済み。陽性者なしとの報告。

12月3日
VTLでシンガポール入国後、既に義務づけられていた到着時のPCR検査、3日目と7日目に指定施設でのART義務化に加え、さらに2,4,5,6日目には自分でARTしてオンライン提出することが必要に。
つまり、帰国後は毎日検査が必要になりました。

ブルガリア、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルグ、ノルウェー、ポーランドを2021年12月6日23時59分からカテゴリー3へ変更。

2021年12月4日23時59分から、過去14日以内にガーナ、マラウイ、ナイジェリアへの渡航歴を有するすべての長期滞在パス保有者および短期滞在者のシンガポールへの入国、乗り継ぎを禁止。

12月3日保健省の発表(英文)

12月5日現在のシンガポール
VTLの国々に変更はありません。
日本からは引き続き7日間隔離で入国できます。

感染者が発見された後も、国内においては、特に厳しい政策は発表されていません。
感染者に関しても、南アフリカおよび周辺国からの帰国便では、
ある程度の感染者の発見は想定済みだったのでしょう。

日本政府の動き

ここから、日本の動きを見ていきます。

11月29日午前
11月30日午前0時から、海外からの外国人の入国を禁止することを発表。
発表の時点で入国停止実施まで12時間を切っていました。
既に出発している航空機だってあるはず。
到着した外国人は一体どうなったのでしょうね。

この時点で政府はそのことについて一切触れていません。

南アフリカ周辺諸国とも関係の無い国々からの入国も一切禁止してしまうのは、マンパワー、システムともに対応できないからなのでしょうか。

この日本の措置については、WHOのマイク・ライアン氏から、
「疫学的に原則が理解困難だ」と指摘されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN020FV0S1A201C2000000/


12月1日
ここで、実は11月29日に国交省が各航空会社に驚きの要請をしていたことがわかります。

国土交通省は新型コロナウイルス「オミクロン型」に対する水際対策を強めるため、日本に到着するすべての国際線について新規予約を停止するよう国内外の航空会社に要請した。当面は12月末までの予約を対象にする。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)は要請を受け入れた。

日本経済新聞電子版より

対象には海外にいる日本人も含まれていて、予約を取っていない日本人が事実上、帰国できなくなることについて国土交通省は「緊急避難的な予防措置だ」と説明しています。

日本経済新聞電子版より

12月1日にこのニュースを知った時点では、
「え!まさか日本人も入国させないのか」とかなりショックではありましたが、「日本だったら、そういう措置をとるかも知れない」などと考えてしまいました。
多分、ちょっと思考停止状態になっていたかも知れません。

でも、よくよく考えてみると、これって要請とは言っていますが、
憲法違反に値しそうな出来事ですよね。

日本国籍があっても外国にいたら、守ってくれるべき国から守ってもらえなくなることを意味しているのですから。

調べて見たら、橋本弁護士がきちんとそのあたり説明してくれていましたね。

橋下徹氏 国際線到着便の予約停止に「完全な憲法違反…日本国民の入国を認めた上で、国内で隔離すべき」

ヤフーニュース

12月2日
国交省が各航空会社に対して、要請を取り下げ。
全日空と日航は4日午前0時に帰国予約再開。

要請から3日目に国交省は、この要請を取り下げました。
国際線予約停止を巡る一連のわけのわからない流れが、12月2日午後の日経電子版の画像から読み取ることができます。

日経電子版12月2日の記事より


日経電子版12月2日の記事より

一体何が起きたのでしょうか。
一説では、一日の入国人数が空港でさばききれないから、
入国数を調整したかったからとか色々言われていますが、
1ヶ月も航空機予約を停止したら、その後の混乱は目に見えています。

12月2日
特例として認めていた、一部の外国人の日本入国を全て取りやめに。

航空機の予約停止要請を撤回したと同時に、外国人に特例で認めていたビザの効力を一時停止するとの発表がありました。
ちなみに、10月に特例として認められて日本に入国した人は、およそ1万人だったそうです。

なんとなく、オミクロン株の感染拡大を防ぐと言うよりは、
入国者の人数を制限したいと言う思惑の方が強そうです。


どうしたら、もっとシステマティックになれるのだろう?

こうやって一つずつの対策や対応を見ていくと、
かなり色々な事がわかってくると思いませんか?

シンガポールは、異変株の発生発表とほぼ同時に、南アフリカ周辺国からの入国を禁止する措置を取っています。もちろん入国禁止には数日の猶予をおいています。

日本は、2日遅れで全ての国からの入国を禁止しました。
禁止事項施行の12時間を切ってからの発表です。

その後日本は、わずか数日で撤回されたとはいえ、なんと自国民ですら、入国できなくなるような措置をとってしまうのです。

数日間の動きを見ただけでも、
何か日本の施策は、場当たり的な感じがするのは、私だけでしょうか?

シンガポールでは、毎日のように入国条件の変更(主に検査の追加)を繰り返していますが、VTLに関しては、アフリカと関係が深い国以外はたとえ感染者が発見されている国でも渡航は禁止されていません。

政府が、オミクロン株を水際で食い止める。でも、各国との行き来はできる限り後退させないと言う強い意志が現れていると思います。

日本では、オミクロン株のせいなのか、どうやら各空港が大変なことになっているようです。

国際便が到着する各空港では、今までも、到着後2時間待機があたりまえだったそうです。

12月に入ってからは、成田で8時間待たされたと言うツイートも目にしました。

これは明らかに、空港内での検査、空港から隔離施設への受け入れシステムがうまく機能していないのでしょう。
空港で働いている職員の方々が疲弊していると言うツイートも見かけました。
だから、入国者数をコントーロ-ルしたかったのかも知れません。

シンガポールだったら、到着から2時間もあれば、
既に隔離施設に到着しています。
空港にはできるだけ、とどまらせないと言う徹底的な対策を取っています。

今回の一連の政府の動きや、空港で今何が起こっているかは、日本に普通に暮らしている人たちには、あまり興味がないかも知れません。

でも、こんなに非効率的な動きばかりしていたら、日本はこれから世界の中でどうなって行くのでしょうか。

日本って国内だけだったら、とっても優等生なのに、
世界から見た日本と言う立場になると、発展途上国とあまり変わらない、
なぜか置いてきぼり感が満載だと感じてしまいます。







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