『鵜頭川村事件』を観て【ネタバレ・苦言有り】

 WOWOWの連続ドラマW『鵜頭川村事件』がいよいよ最終話を迎える。
 その前に、いろいろ気になったところをつらつら書いてみようと思う。

 原作とは時代設定などが異なるそうなので、あくまでも連続ドラマW『鵜頭川村事件』の感想になる。

 ネタバレ(話の根幹部分ではないが)を含むので、「まだ観てないよ」という方はここで引き返してほしい。


やっぱり蓮佛美沙子

 このドラマの中で、蓮佛美沙子さんは主人公・岩森明(松田龍平)の妻仁美と、双子の妹矢萩有美の二役を演じているのだが、まあ素晴らしい

 都会に住む岩森仁美の垢抜けた(しかし昔受けた儀式のせいでかなり色濃い陰がある)美しさ、因習に縛られた田舎に暮らす有美の、洗練されておらずいつも暗い顔ばかりしている、暗さの向こうに透けて見える美しさを見事に演じているように思う。

 ちょっとこういう役をやらせたら右に出る者がいないのではないかと思わせるくらいの透明感、清潔感だ。

 改めて、蓮佛美沙子という女優がいる幸せをかみしめられるというだけで十分価値のあるドラマだといって差し支えなかろう。


細かいところが気になって

 気にするほどのことではないのかもしれないが、ドラマのオープニング部分。ウィキペディアの市町村のページのテンプレートみたいなものが背景に溶け込むようにして表示されるのだが……

 群 神達群

はいけない。群れてどうする。そこは郡でなくては。

 このオープニング映像から、鵜頭川村ははっきり「地方公共団体」であることが示唆されるし、のちに鵜頭川村役場が登場するように、ある市町村の中にある集落ではなく、村であることがはっきりと描かれている。


見捨てられた村

 鵜頭川村は、未曽有の集中豪雨に襲われ、村外に通じる唯一のトンネルは崩落、村全域が停電し、電波塔も倒壊して完全に孤立状態となる。

 完全な孤立状態こそがこのお話の前提になる部分なのでそれは仕方がないことだし、鵜頭川村から外部に対しての連絡手段が一切途絶する、というところまではよい。

 しかし、外部から鵜頭川村が依然孤立していることに全く気付いてもらえないということが、この現代社会においてありうるのか、という部分には疑問が残ってしまう。

 発電機は矢萩の家にしかないことになっているが、役場にも非常電源くらいは整備されているはずで、外部に対してSOSを発することくらいは可能であるように思えるのだが……。

 この辺、原作では設定が1979年であるそうなので、その時代ならばありうるかなあ、という気がしないでもない。


村長が亡くなった村

 さて、物語の途中で村長(綾田俊樹)が亡くなってしまい、村長の臨時代理を決めるシーンが出て来るのだが、これもちょっと引っ掛かる場面ではある。

 矢萩家の当主、吉朗(伊武雅刀)が「臨時会を開くぞ!」と言って避難所らしき場所で町内会の寄り合いのようなものを開き、自分が村長代理になってしまうのだ。

 条例で副村長を置かないこととしている村はそう珍しくはない。とはいえ、村長以外は全員ヒラ職員ということはまずありえない。少数であっても課長職くらいはいるだろうから、村長が欠けた場合はおそらく総務課長あたりが職務を代行するはずだ

 村議会があれば、臨時会を招集して村長代理を選出することもありえなくはなさそうだが(法的に可能かどうかは知らない)、「村議会」と言えるようなものではなかった。

 考えられるとすれば、村議会が廃止されており、町村総会を採用している村である可能性だが、とても「総会」と言えるような規模ではなかった。


一集落であったほうが……

 細かいことにケチをつけて本当に申し訳ないのだが、こうした細かい「引っ掛かり」が、ドラマの世界にのめりこむのを邪魔してしまうのだ。

 現代に設定を移したのであれば、鵜頭川村という「地方公共団体」ではなく、○○町あるいは○○村の鵜頭川集落、という設定にしたほうが、無理のないストーリーになったのではないか、と思ってしまう。

 ○○村自体は外部とも連絡が取れるようになったし、役場の電力も回復して、復旧が進んでいる、ところが村の端にある鵜頭川集落は孤立状態が続いているというシチュエーションは全然ありえなくはないし、集落のリーダーを寄り合いで決めるというのも無理がない。

 話自体は大変面白いドラマであるだけに、細かい引っ掛かりがあるのが少し残念なところではある。

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