小道具おせち

2023年、あけましておめでとうございます。

結局今年は帰省もせず、かといって仕事があったわけでもなく、比較的ゆっくりとした年末年始を過ごしております。旧年はあまり小道具を作らなかったなという印象はありましたが、そのぶん1つ1つの現場により多く注力できたのではないかしらと思っています。願わくば今年もそんなふうに行きたい。誰かと競い合ってるわけでもないのに年間現場数を稼ぐような予定の詰め方は(数年前まではそうでした)、今の自分にフィットしていない気がするんですよね。支払いがいいとか箔のつく仕事だとかより「食指が動くかどうか」のほうがずっと重要。

まあ、琴線に触れる作品であれば規模の大小を問わない、っていうのは僕にとって小道具やりはじめた最初期からブレてないポイントなので、引き続きそういったお仕事はお待ちしておりますよろしくお願いいたします。

* *

それはそうと、部屋で一人じっとしていると、普段あまりやらないことをやってみたくもなるもので。実家に帰らない年のお正月はたいてい、平常時となんら変わりのない食生活を送っていたりするんですが、ものはためし、ここらで少々おせちでも作ってみようといった気分になったのでした。

おせちについて僕が知っていることはとても少ない。いわゆる「正しい献立」が何と何であるのかさえ、詳しくは理解していないという有り様です。けど、世の中には創作おせちというジャンルも生まれていることですし、僕だって腐っても小道具、見よう見真似でやってやれないことはないだろうと、いつものお店DAISOへ材料の買い出しに向かったのが12月30日の夜でした。

たとえば鯛が「めでたい」を意味するように、おせち料理の品々にはそれぞれ縁起を担ぐ意味が込められていると言います。そういうことだけは一丁前に知っているのです。どうでもいいんですけど、めで「たい」から鯛ってのはさすがに無理がありませんか? 魚の名前がメデならまだしも、「たい」のつく言葉なんて他にも山ほどあるだろ。どうなんだよ。え、どうなんだそこんとこ。

閑話休題とりみだしました。というわけで自作おせち、早速お披露目していきます。
まず一品めはこちら。

紅白スポンジ

めでたい色といえば紅白と相場が決まっています。ビビッドな赤と白、それに中間色でもあるピンクの三色で彩られ、ふわふわとした食感、あ、いや触感が楽しめる料理といえるでしょう。スポンジは水をたくさん吸うので、それにあやかっていろんな知識を吸収して学び続けられるようにとの思いが込められています。

さあ、どういう趣旨なのか、だんだんわかってきましたか? 現在進行形でご理解いただけつつありますでしょうか? あきれて踵を返すなら今のうちです。どんどん行きます。二品め。 

圧縮タオル

かさばらず持ち運べて旅行やお泊りに便利な圧縮タオルです。そのままでも落雁みたいで十分美味しそうですが非常に固いので、ごく少量の水でふやかしてからいただくのが一般的な作法とされています。水を含むとお餅みたいに何倍にも膨れ上がるのでボリューム満点。ぎゅっと密度の高い一年を過ごせるようにとの祈りが込められています。

そしてお気づきになりましたか、これらの料理が何の上に乗せられているのかを。やや高級な漆塗りの食器に見えたりしてくれたら御の字ですが、ちょうどいいサイズのお皿がなかったのでワイヤレス充電器を流用しています。

三品め。

ジェルクリーナーの結束バンド締め

…いちおう昆布巻きの画像を見ながら作ったんですけどね。やはり料理は難しい。あまりにもポカーンとされることを恐れて商品画像を横に添えてしまいました。架空作家にあるまじき失態です。

ジェルクリーナーはスライムのように不定形でぐにゃぐにゃしており、いくら結束バンドで縛り上げても簡単にすり抜けてしまいます。自分もこんなふうに様々な制約がある中でも最大限自由に振る舞いたいと願ってやみません。

四品め。

圧着端子

もはや調理の体裁をとることさえ辞めたような盛り付けでごめんなさい。もとが比較的マイナーな素材なので、下手に加工してしまうと正体不明の金属片にしか見えなくなると判断し、小皿にただザッと広げるにとどめた次第です。節分の豆かよ。

圧着端子は主に電子工作で導線と導線をつなぎ合わせるのに使われます。両側から導線の端を突っ込んで真ん中を専用ペンチで押し潰せば接着完了。ハンダゴテが上手に使えない小道具さんの心強い味方です。言わずもがな、これはご縁が強く結びつきますようにとの思いを表しています。

…これくらいにしておきますか。一人暮らしですから、あまり多く作りすぎてもお腹いっぱいになってしまいますし。

では最後に、もう「おせち」でもなんでもないんですが(大丈夫、最初から「おせちでもなんでもなかった」よ)、なんだかんだ言ってここまでは全部前フリで、お前は結局これがやりたかっただけなんだろという一品をご覧ください。

くぎのいかなご煮です。

ご清聴ありがとうございました。

本年もよろしくお願いします。

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?