【「景岳全書」婦人科を読む】0. はじめに
病院勤務していた頃、ベテラン助産師の「最近の赤ちゃんは冷えてるわ。生まれてすぐなのに赤くなくて白いし。羊水が冷えとる。ここ10年で難産や逆子もすごく多いわ。」という言葉が気になっていました。実際に妊婦さんの身体を触ってみると、お腹や足が氷のように冷たいこともありました。
昔の産婆は、「冷えは難産になる」ことを知っていて足やお腹を冷やさないよう養生法を伝えていました。妊婦さんたちも腹帯を身につけ、足湯で下半身を温めていたといいます。病院での分娩が主流となってからは、昔からの養生法も迷信だからと守られなくなり、養生法すら知らない医師・助産師も増えています。
私は大学で産婆について研究し、触診で胎児の姿勢を把握して難産を予測し回避する分娩介助法など、かつて産婆にも多くの技があったことを知りました。鍼灸の知識をもち、産痛緩和や分娩促進に役立てていた産婆もいたそうです。
しかし、分娩が医師の下で行われるようになると、口伝により伝わっていた産婆の技や知識は絶えてしまいました。先人が伝えてきた技や経験に基づく知識は、一度絶えてしまえば二度と元には戻りません。
鍼灸師となり女性の健康に寄り添う中で、先人たちは女性の身体の不調や疾患について、東洋医学的にどのようにとらえて治療し、養生法や手当ての方法を伝えていたのかを学びたいと思うようになりました。また鍼灸の技や知識も大切に守り伝えなければ、産婆の技のように途絶えてしまうのではと危惧しました。
古典書物について大上勝行先生に相談したところ、「景岳全書」を勧められ、少しずつ読み進めることとなりました。この度、書き下し文と口語訳、コラムを『「景岳全書」婦人科を読む』として連載します。同時に解説は山口誓己先生が担当してくださいます。
「景岳全書」を紐解き、学び、臨床に生かすことで後世に伝える小さな一歩になればと考えております。
>>序
<目次>
仁木小弥香
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