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「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に行ってきました

2022年5月9日まで東京・森美術館で開催中の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に行ってきました。

Chim↑Pom(チンポム)は、独創的なアイデアと卓越した行動力で、社会に介入し、私たちの意表を突く数々のプロジェクトを手掛けてきました。
本展は、結成17周年を迎えるChim↑Pomの初期から近年までの代表作と本展のための新作計約150点を一挙に紹介する初の本格的回顧展です。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/chimpom/

正直「Chim↑Pom」という存在をまったく知りませんでした。

森美術館のwebサイトをみていたら回顧展をやるという情報が載っていたのですが、私のイメージは「何かポップな現代アートを手がけるユニットなのかな?」くらいの感じでした。

Chim↑Pomは「芸術実行犯」だった

ビルバーガー

エントランスを入ると、いきなり足場が組まれた展示室。森美術館を縦に真っ二つに区切った構成になっており、私たちは薄暗い中を歩いていきます。

冒頭で流れている「スーパーラット」「ブラック・オブ・デス」という映像作品。これらをただ眺めているだけだと、なんとなく若者がキャッキャとふざけているようにしか感じません。しかし今回お借りした音声ガイドの解説で、これらが都市が抱えるゴミ・残飯などという都市問題と向き合っていることに気がつきます。

そう、Chim↑Pomは「ポップな現代アーティスト」を装う「芸術実行犯」だったのです。

「酔いどれパンデミック」という作品は、2019年のイギリスで開催されたイベントに出店した時の作品。パッと見は「薄暗いパブで、いくつかのインスタレーションとともに、参加者がひたすら飲みまくっている」風景にしか見えません。
しかし「19世紀のコレラ流行」「ビールは生水よりも安全」「劣悪な衛生環境」などというキーワードを組み合わせて「パブ」というアウトプットになったことがわかります。

パビリオン

ひとつひとつの作品の解説をしていてはキリがありませんが、被爆地・広島に関する作品はとても印象に残っています。

「ヒロシマの空をピカッとさせる」は、原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」という文字を描く作品。これを見た瞬間、何かタブーに触れてしまったような感覚に襲われました。
しかし音声ガイドでも述べられていますが、なぜそんな感覚になったんだろう?なぜ触れない方がベターとされるのだろう?…知らないうちに「触らない方が吉」という感覚になっている自分に気づかされました。

「パビリオン」「ノン・バーナブル」は世界中から広島へ送られてくる折り鶴でつくられた作品。その折り鶴の山の中に入り込むという何かポップな体験と、隣で流れる「折り鶴を1枚の折り紙に戻す作業を、ひたすら繰り返す」という非現実的な映像。ひとつひとつの折り鶴に想いが込められているからこそ、当時の広島市が増え続ける折り鶴の保管に苦慮していた…ということを知らせてくれる作品です。

LEVEL 7 feat.『明日の神話』

このnoteの冒頭に「Chim↑Pomという存在をまったく知らなかった」と記しましたが、ひとつ記憶の片隅に残っていたものがありました。

「LEVEL 7 feat.『明日の神話』」

当時の私のイメージは、
“渋谷駅の岡本太郎の壁画にイタズラ書きされたんだ”
くらいのものでした。もちろん「Chim↑Pom」が手がけたことだという記憶もありません。しかし、

広島・長崎・第五福竜丸と、原水爆が炸裂する悲劇を描いた岡本の壁画に、福島の原発事故という新たな1シーンが加わったことを表わす意図

があったことをはじめて知りました。公共的な壁画に手を加えることへの賛否はあると思いますが、彼らの「芸術実行犯」というフレーズがものすごく腹落ちできるゆえんだと思います。


今回の森美術館の回顧展は、当時Chim↑Pomが手がけた展示会「また明日も観てくれるかな?(2016年)」「道(2017-2018年)」「酔いどれパンデミック(2019-2020年)」のそれぞれの熱量と比べると、及ばないものなのかもしれません。

しかし、当時の様子を振り返る映像を見るだけでも、その熱気というか異様な感じは伝わってきますし、私のようなChim↑Pom知らなかった層にとっては、彼らの熱量を感じるには充分な回顧展になっていると思います。


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