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ヴィヴァルディ計画再始動

2021年9月、ヴィヴァルディ計画が再始動した。

ヴィヴァルディ計画とは何者なのか。


名前の通り「ヴィヴァルディの曲を演奏したい」と集まったメンバーによる、コンサートシリーズである。特に「調和と霊感」作品3の全12曲を演奏することを目標としている。コンサートの名称なのか、団体名なのかは、私もちょっとあやふやだ。

元を辿ると、インヴェンツィオーネ・アルモニカ(古典派を演奏するアマチュアオーケストラ)の打ち上げの席で、「ヴィヴァルディ、弾きたいんだよね〜」との呟きに、思いのほか賛同者が多かったために、その後、実際のコンサートとして実現した企画である。

第1回のコンサートは、2019年2月11日、ゲストにチェリストのエマニュエル・ジラールを迎え開催された。

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演奏も運営も限られた人数で行ったにも関わらず、メンバーの熱量は相当なもので、各々の役割を自ら模索しながらコンサートを短期間で作り上げていくのは、非常に濃厚で充実した時間だった。

結果、本番のステージも、演奏者・観客が一体感を感じる熱気あるものになったと自負している。

これまでいくつかのアマチュアオーケストラに関わってきたが、全員が同じような熱量を持って、コンサートに向かう、というのは、なかなか難しいことだ。

演奏技量も違えば、それぞれの仕事や家庭の事情で関わることのできる時間も違う。

当然、音楽的に上を目指したい人と、楽しければいい人が出てきて、方向性も食い違ってくる。もっといいものを作りたいのに、もどかしい思いが募ることも多い。

アマオケだから、仕方ないと言われるとそれまでだが、好きでやっているからこそ、できるだけストレスなく、充実した時間を過ごしたい。

演奏面だけではなく、運営も然り。弾ければいいでしょ、という奢りのあった若い頃の自分を省みると恥ずかしい。

今、自分が仲間と演奏できるこのシチュエーションは、仲間が演奏以外の労力をかけて用意しているんだ、と思うと、一回一回の練習も、自ずと大切さが変わってくる気がする。

このヴィヴァルディ計画・第1回コンサートは、メンバーの関わりが能動的で、演奏はもちろん、運営面でもストレスどころか面白さを感じた。かれこれ30数年楽器を弾いてきて、たくさんの演奏会の機会に恵まれたが、その中でも、思い出深い演奏会になった。とにかく、このステージに関われたことを本当に嬉しく思う。

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余談だが、演奏に自信がなくても、参加できるアンサンブルには、どんどん参加したらいいと思っている。どこまで弾けたら充分かなんて考えていたら、際限がない。仲間と一緒に演奏する楽しさは想像以上だ。

ただし、一緒に楽しむためには、ある程度練習して、対等に音楽で会話できるところを目指す姿勢は必要だと思う。

一人で練習しても解決しなければ、先生や仲間に頼ればいい。引き上げてもらうのを待つのではなく、自分はどう弾けるようになりたいのか、アピールできると、グッと先へ進めるのかもしれない。

なんて、偉そうなことを言いつつ、私自身、「どう弾きたいか」が、一番難しくて、毎回四苦八苦しているのだけれども。

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少々脱線したが、話をヴィヴァルディ計画に戻す。

当然、第2回演奏会も2020年5月頃に開催するつもりでいた。

…しかし、新型コロナ感染症の感染拡大。

前述通り、私たちはアマチュアの演奏集団である。普段は演奏家以外の肩書きを持って生活しており、プロの演奏家と違い、人前で演奏しないことで、経済的に逼迫することはない。悲しいことに、私たちが演奏活動を行わなくても、生活していくことに支障はないのである。

それに加えて、現在、メンバーはそれぞれ離れた地で生活を送っている。家族と会うこともままならない状況において、音楽を楽しむために集い、コンサートを行う事は、非常に難しい状態に追い込まれた。

3ヶ月・6ヶ月…と、開催を延期しながら、また集えるタイミングを探っていたが、一向に埒があかない。今後の方向性が見出せない。このままでは、メンバーのモチベーションも続かないだろう。ヴィヴァルディ計画もこのまま頓挫するのだろうか…と、思っていたところに、

リモートで動画撮ろうか

と声が上がった。


私は、正直なところ、私達の演奏スタイルでリモート動画を撮るのは、難しいと思っていた。これまで、指揮者を置かず、その場での音楽の対話を楽しむアンサンブルをしていたからだ。

しかし、この機会を逃せば、このメンバーでアンサンブルをすることはなくなってしまい、私自身も、ヴァイオリンを演奏する生活から大きく離れてしまうのではないか、という焦りがあった。

そこで、私達の強みを思い出してみる。これは、ヴィヴァルディ計画というよりも、母体のインヴェンツィオーネ・アルモニカが培ってきた力だ。

フットワークが軽く、古株だとか、新人だとか関係なく、いいアイディアはどんどん採用していく。より良いもの、より充実したものを目指し、いつも、ちょっと緊張感がある。イメージを形にしていく力はこれまでのコンサートで少しずつ培ってきた。固定観念にとらわれてチャレンジしないのは、らしくない。

この独特な雰囲気が居心地悪い人もいるだろう。この団体は普通じゃないと揶揄されたこともあるが、今振り返ると、最高の褒め言葉かもしれない。

実際に、どうしたらリモートでの収録で音を重ねていけるのか…オンラインのミーティングで模索し始めたところ、我々の強みが生かされそうだ。
なるほど、これは面白い。私の不安は杞憂に終わりそうである

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ありがたいことに、このアンサンブルを続けたいと思ってくれたメンバーが多かったのか、あっという間に話はまとまり、この企画は動き出した。

ヴィヴァルディ計画再始動である。

手探りではあるが、それを楽しみながら、私達らしい動画を作り上げていくので、ご期待いただきたい。

Text:Wakana(Violin)/  Photo:Tohl

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