課題解決を目的としない課題解決コミュニティ『つなげる30人』の本質
2015年にスタートした「地方創生」政策は、地域の自立を目指し、全国で新事業が立ち上がりました。しかし、多くの地域で短期的な施策に終わり、持続的な発展という本来の目標が達成されていないケースが散見されます。ブームが一段落し、予算が減少すると共に、再び課題が表面化している地域が多いのが現状です。
多くの地域が直面している問題は、プロジェクトが「金の切れ目が縁の切れ目」(あるいは異動などで「3月31日で終わる関係性」)になりがちなことです。プロジェクトが終了するとすべてが途絶え、持続可能な発展が妨げられてしまうのです。
こうした背景を受け、「つなげる30人」は、単なる地域課題の解決に留まらず、人と人との信頼関係を基盤にしたフラットな関係構築を目指しています。地域が自律的に成長するための新たなアプローチを提供し、参加者が対等な立場で対話を重ね、新たなアイディアを生み出し、それを実践していくことで、持続可能な地域活性化を実現しようとしています。
従来のアプローチの課題
なぜこうした問題が生じているのでしょうか。まず、一般的な地域コミュニティ活性化策のステップを見てみましょう。
一般的な地域コミュニティ活性化策のステップ
課題の特定
現状を把握し、アンケート調査やワークショップを通じて課題を明確化。目標設定
短期・長期の目標を設定し、KPI(成果指標)を定めます。プランニング
解決策を検討し、必要なリソースやパートナーを決定します。資金調達と実施
必要な資金やリソースを確保し、実行します。モニタリングと評価
プロジェクトの進捗を評価し、必要に応じて修正。持続可能性の確保
プロジェクト終了後も効果が続く体制を整備。
このアプローチの問題点は、地方自治体や大手企業が主導し、住民やステークホルダーは後から巻き込まれる形になることです。計画や目標は主催者に従い、住民の役割は限定的です。悪意があるわけではなく、「それしか知らない」「他にやり方がない」という現実が原因となっている場合が多いのです。
また、地方自治体は年度予算に縛られ、短期的な成果を求められるため、長期的な信頼関係構築にリソースを割けないのが現状です。その結果、住民の声や意見が反映されにくく、持続的な発展の基盤である信頼関係が構築されないまま、プロジェクトが終了してしまいます。外部のコンサルタントに依存する場合も、地域特有のニーズに基づかない計画が実施され、実質的な効果が得られないことが多いのです。
地域の未来を担うべきステークホルダーが「都合よく選ばれ、そして利用され」、主催者の計画に沿って限定的な役割しか果たせない。このような状況では、地域の未来を創るための自律的な力が育まれるはずもありません。
「つなげる30人」のアプローチと「急がば回れ」
これに対して、「つなげる30人」は**「急がば回れ」の精神を体現しています。短期的な成果を追うのではなく、時間をかけて信頼関係を築き**、フラットな構造のもとで参加者全員がリーダーシップを共有します。各人が自発的に役割を担い、地域課題の解決に取り組むことで、新たなアイディアが次々と生まれます。
このプロセスは、参加者が知識や経験を持ち寄り、対話を通じて信頼を深め、持続的な発展を目指すものです。プロジェクトが終了しても関係は続き、新たなプロジェクトが生まれるサイクルが形成されます。
信頼関係とフラットな関係を軸にしたこのアプローチは、地域が自律的に成長し続けるための基盤です。短期的な成功を急ぐのではなく、時間をかけて地域の根本から支える仕組みを構築することが、最終的に大きな成果を生むのです。
まとめ
「つなげる30人」のアプローチは、これまでの短期的成果に頼らざるを得ない地域活性化策の課題を超え、持続可能な変革を実現する新たな道を示しています。行政がどれだけ尽力しても、また、いずれいなくなるコンサルが一時的に尽力しても、地域住民やステークホルダーが主体的に関わり、地域の未来を本気で考えるクロスセクターの主体者コミュニティがなければ、真の発展は望めません。
地域課題の解決は、一部の権威や専門家に任せるだけでは不十分です。さまざまな立場の人々が対等に協働し、信頼し合う関係を築くことで、はじめて持続可能な未来が創り出されるのです。
この地域の未来を本気で考える人々が集まり、対話と実践を繰り返すプロセスこそが、未来の地域づくりを可能にします。「つなげる30人」はそのモデルを提示し、短期的な解決策に頼るのではなく、長期的視点で信頼を基盤にしたネットワークを築くことの重要性を強調しています。
結局のところ、地域の未来は、本気で未来を創る覚悟を持った人々が集まり、対等な立場で学び、行動を起こすことでしか実現しません。行政だけの力では不十分であり、地域のために真剣に向き合う多様な主体者こそが、未来の鍵を握っているのです。
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