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このところ、連日の投稿になっていますが、党大会の直後で動きが出ているのだと思われます。画像は江西省の省都の郊外で、この画像が選ばれているのは、同省が省レベルで土地売却収入の減少が突出しているからです。
中国の経済成長なるものは、地方政府(地方自治体)が行う再開発やインフラ開発に大きく依拠したものであり、その財源は国有地(土地は公有制なので省レベル以下が管理する場合も含む)の宅地(マンション用地)としての分譲に大きく依拠してきました(本書p.195参照)。極言するならば「鬼城」(ゴーストタウン)と呼ばれる、ろくに入居者のいないマンションを相当の郊外に建て続けることを通じて、経済成長が維持されてきたのです。
くわえて地方政府の税収は乏しく、2014年5月まで地方債の発行も制限されていたことから(同p.230 注71、特にインフラ債のことを「専項債」と呼ぶ)、中国では「融資平台」と呼ばれる第三セクターの用地買収機関を隠れ蓑として、国有地を切り売りすることで、地方政府は構造的な歳入不足を補ってきたのです。強権的な地方政府は、交通の不便な荒れ地を接収することで、いくらでも国有地を作り出すことができます。これが第一の打ち出の小槌です。経済さえうまく回っている時ならば、やがて地下鉄が超郊外にまで延伸されることで、元の荒れ地は市街地に吸収されてゆきました。
背景には、地方政府が融資平台に対して架空取引のような開発実態のない用地売却を繰り返して、実際には地方政府の財政赤字であるものを融資平台の債務に移転することの横行があったはずです。これが第二の打ち出の小槌でした。いうまでもなくこの錬金術は、バブルの腰折れによってマンション販売が下火になれば行き詰まります。
今回の中央政府の決定は、一定の抜け道はあるにせよ、これを禁じるというのですから、今後は財務基盤の弱い地方政府から順に財政破綻してゆきます。すでに昨年秋以降、各地で地方公務員の給与は切り下げられています。

コロナの蔓延に対する景気刺激策が住宅ブームを過熱させ、慌てて抑えこんだところ腰折れ

中国政府は不動産バブルの崩壊の露呈が群発的な民衆の蜂起を呼んで、体制の首を絞めることについては正しく理解しており、昨年来 本格的な不動産取引の規制に乗り出しています。これは部分最適としては正しい解です。
また今回、融資平台のデフォルトと地方政府の財政破綻を回避するために、上記の錬金術を禁じようとしていますが、これもまた経済の決定的な混乱を避ける目的で、部分最適の正しい解です。
真の問題は習指導部なり共産党が、全体最適を見ようとしていないことです。モグラ叩きのように当面の矛盾に対処することにより、何とか引き続き経済の舵取りをしようとしている訳ですが、根本的には社会主義市場経済というアヘンのようなシステム(p.42参照)を止めること、つまりは共産党が下野する以外には経済の膿を切り出して事態を収めることはできないという事実を認めないかぎり、どうなるものでもありません(p.192以降参照)。

元の日経の記事は、以下です。


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