この👇記事の元の『一人負けニッポンの勝機』は日本経済の実態を全くつかめていなくて呆れた本だった。
何点かをピックアップする。
先日に記事にしたものと似た見方だが、初めの約10年間はバブル崩壊+超円高+金融危機といったマクロ環境の悪さ、不良債権処理と企業のリストラが一段落してからの約20年間は企業の収益追求がマクロ経済の好循環に逆行する経済構造になったことが主な理由である。
よくある例えだが、金融緩和はアクセルではなく「ブレーキを緩める」といったほうが適切である。なので、エンジンが止まっている状態では効果が無い。「異次元の金融緩和」がリフレ派の目論見通りにはいかなかったのはそのためである。
これに関してはほぼ同意→「日本がデジタル大国ではなく非正規大国になった経路」を。
日本経済の潜在成長率は調査対象国の中でも下位に位置するはずなので、売上成長率の見通しが他国に比べて低くなるのは当たり前で、「経営判断や戦略に問題があることを示唆している」ことにはならない。
日本企業の経営者が無能だという評価だが、実際には利益を激増させているのでその評価は誤っている。1994年2月の経済同友会「舞浜会議」での宮内オリックス社長の言葉「企業は、株主にどれだけ報いるかだ。雇用や国のあり方まで経営者が考える必要はない」の通りで、マクロ経済のパフォーマンスが悪くしてでも株主利益を増やす経営こそ「正しい経営」なのである。
15~20年位前までならともかく、今頃こんな主張をされても信じる人はほとんどいないのでは。
結論だが、このような論者は日本の経済社会に生じた二つの構造変化、すなわち
人口減少(国内市場の永続的縮小)
企業業績とマクロ経済のデカップリング
という、個々の労働者や経営者の努力ではどうしようもないことが相対的衰退の根本原因であることを認識できていないわけである。