消費税減税研究会のあまりにもお粗末な提言⑴

消費税減税研究会が発表したとりまとめの内容があまりにもお粗末なので、数回に分けて検証する。当noteのレギュラー読者は既読の内容であることをお断りしておく。

70ページに掲載されている講師陣の話をそのまま羅列しているだけで、内容が整理されていない。生煮えのまま発表したことが歴然としている。

1ページの基本認識から誤っている。

長期的に見ても、消費税が導入されて30年以上が経つが、税率は徐々に引き上げられた反面、成長率は低迷し、物価や賃金の上昇は鈍く、慢性的なデフレの状況が続いている。この間20年以上にわたりほとんど経済成長していない国は、先進国では日本だけである。その最大の原因は、GDPの約6割を占める個人消費の低迷である。そして、低迷の原因が、消費に直接悪影響を与える消費税増税であることは明白である。平成の失われた30年とは、つまり、消費税増税に税収を頼ることによって生じた経済縮小の時代だったと言える。

デフレになったのは消費税導入から約10年後で、期間も30年の半分弱しか続いていない。

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1人当たり実質GDPはバブル経済崩壊後の1991→1994年と金融危機・ITバブル崩壊後の1997→2002年に停滞したが、その後は世界経済の不況期(世界金融危機と新型コロナ危機)を除くと成長を続けている。2002年を起点にすると、米独には劣るものの、英仏などの主要先進国と遜色ない成長率である(付録を参照)。

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こちらは4ページから。

日本経済の衰退は長期的な現象である。日本は平成の30年間で、明らかに没落した。1人あたりのGDPは2000年の世界第2位から、2020年は23位にまで低下している。

この順位はIMFのWorld Economic Outlook DatabaseのUSドル換算GDPを比較したもののようだが、順位低下の主因は実質成長率の相対的低下ではなく、4割近い実質為替レートの減価(円安)である。

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為替レート変動の影響を除去して比較するために、USドル換算する際の対ドル為替レートを2010年のもので固定した1人当たりGDPを用いると、日本の順位は2000年が12位、2019年が17位である(世界銀行Databankから/タックスヘイブンを除く)。下がってはいるが、2位→23位のような極端な下がり方ではない。

「経済成長していない国は、先進国では日本だけ」が誤りなので、「平成の失われた30年」の原因が消費税増税→個人消費低迷というのも誤りである。個人消費低迷の主因は企業収益の拡大が賃金上昇に結びつかなくなったことであり、2002年以降もデフレ・ディスインフレが続いているのも、賃金の低迷が主因である。

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結論を先に書いておくと、賃金上昇を阻んでいる主な要因は、人口減少(の見通し)・グローバリゼーション・株主至上主義・国の歳出の縮減である。従って、消費税減税には研究会が期待するほどの効果は期待できない。

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続く。

付録

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